社説:性犯罪歴の確認 恣意的な運用防ぐよう
京都新聞 / 2024年3月22日 16時5分
子どもを性被害から守るため、実効性の伴う取り組みが求められよう。
政府は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設法案を国会に提出した。犯歴の確認を学校や保育所に義務付け、犯歴のある人の就労を事実上制限する。
12歳以下の子どもに対する重大な性犯罪の認知件数は年間約千件に上る。幼い子どもは被害と認識できない場合もあり、数字は氷山の一角にすぎない。子どもを守る手立ての強化は不可欠である。
対象となるのは、就労希望者や現職者だ。こども家庭庁が構築する情報照会システムを使い、雇用主側が申請し、犯歴がなければその旨が通知される。ある場合は、同庁が本人に事前告知。内定を辞退しない場合は、雇用主側に「犯罪事実確認書」を交付する。
論点だった犯歴の照会期間は、拘禁刑(懲役刑と禁錮刑を25年に一本化)が刑終了から20年、罰金刑以下は10年とした。刑法犯だけでなく、痴漢や盗撮などの条例違反も対象に含む。
当初、政府は拘禁刑で「10年」と考えたが、与党の一部からの批判を受け、昨秋の臨時国会での法案提出を断念。法案では性犯罪の再犯者の9割が、前回犯罪の有罪確定から「20年」に収まっていることを根拠とした。
学習塾や放課後児童クラブ、スポーツクラブは任意の「認定制」とした。国の認定を受けると広告表示が可能となり、犯歴確認の義務を負う。
さらに期間も対象もより広げるべきとの声の一方、刑法が定める更生の観点や、「職業選択の自由」を保障した憲法との兼ね合いから懸念も根強い。
性犯罪全体の約9割は初犯で、犯歴の確認による効果は限られる。法案では、性犯罪歴がなくても、雇用側が子どもの訴えなどから「性加害の恐れがある」と判断すれば、配置転換などの安全確保措置をとるよう義務付け、難しい場合は解雇も許容されるという。
懸念するのは、子どもや親から訴えがあった場合、誰がどう調査し、判断するかだ。恣意(しい)的な運用があってはならない。
法案が成立すれば、政府は2年後の開始に向けてガイドラインを作るという。情報管理や権利保護を含め、明確な基準を早急に示すべきだ。第三者によるチェック体制や、再犯を防ぐ教育拡充も欠かせない。国会での丁寧な議論を求めたい。
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