社説:二階氏の不出馬 責任逃れは許されない
京都新聞 / 2024年3月27日 16時5分
国民不在で演出された茶番劇にしか見えない。
自民党の二階俊博元幹事長が次の衆院選に立候補しないと表明した。
記者会見で二階氏は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で自身の派閥が立件されたことに責任を取ると述べたが、議員辞職は否定し、事件の詳細について語ろうとしなかった。政治倫理審査会への出席についても否定を重ねた。
二階派は2018年からの5年間で、政治資金収支報告書の収入と支出に計3億8千万円を過小記載したとして、元会計責任者が在宅起訴された。
二階氏も、派閥パーティー券の販売ノルマ超過分3500万円を裏金化したとして秘書が略式起訴され、有罪判決を受けた。
自民は安倍派幹部をはじめとする関係議員の一斉処分を検討している。党の実力者である二階氏についても「選挙での非公認」など重い処分が取りざたされていたが、党総裁である岸田文雄首相と二階氏周辺が根回しし、処分せず自ら不出馬を表明することで決着したとみられる。
政治的な影響力を保持しつつ裏金問題の説明責任からも逃れたい二階氏と、安倍派幹部へ処分を科す「大義」が必要な首相の思惑が一致したのだろう。
事件の真相解明を置き去りにした幕引きの手続きではないか。
衆参の政倫審に出席した安倍派の議員は裏金について不可解な説明を繰り返し、違法性を認識しながら事務方に責任を押しつけた疑いは一層深まった。野党は、裏金化に深く関与しているとされる森喜朗元首相の国会招致や関係議員の証人喚問を求めている。自民党は速やかに応じるべきだ。
二階氏の不出馬表明で安倍派幹部に対し「選挙での非公認」以上の処分を科すハードルが下がったとされる。それでも今後の選挙で当選すれば、「みそぎ」を済ませたとして平然と元のさやに収まるのではないか。
事実解明をしないままの処分では国民の理解は到底得られまい。
二階氏は自民党幹事長を歴代最長の5年あまり務める間、使い道の公表義務がない「政策活動費」として約47億円も受け取っていた。この実態についても説明責任を果す必要がある。
裏金問題では、二階氏と同じ派閥代表としての岸田首相自身も責任が問われている。党内のウミを出し切る覚悟と行動を改めて強く求めたい。
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