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社説:自民裏金の処分 首相の保身と打算が透ける

京都新聞 / 2024年4月6日 16時0分

 事件の核心を解明しないまま、内輪の処分を優先させて問題を矮小(わいしょう)化するつもりなのか。

 自民党が派閥の裏金事件に関係した議員の処分を決めた。最大派閥の安倍派で衆院側、参院側のトップだった塩谷立氏、世耕弘成氏を離党勧告とした。二階派を率いた二階俊博氏の処分は見送り、他の両派幹部は党員資格停止や党役職停止の期間で差をつけた。

 対象は政治資金収支報告書に不記載があった85人中、金額500万円以上と派閥幹部の39人にとどまる。線引きの理由も処分の根拠もあまりに不透明だ。

 党総裁の岸田文雄首相が、自らを処分なしとしたのが象徴的である。岸田派の会計責任者が報告書の虚偽記載で有罪となっている。岸田氏は「所属議員に資金が渡っていない」と説明したが、国民には身勝手な理屈としか映らないだろう。

 処分に対して世耕氏は離党届を提出した。塩谷氏は「独裁的だ」と反発し、再審査の請求を検討している。

 一方、同じ派閥幹部だった萩生田光一氏は不記載額が3番目に大きかったにもかかわらず、党役職停止だった。すでに政調会長を辞任しており、何の痛みも伴っていない。実に不可解な軽重ではないか。

 そもそも「2番目に重い」とする離党勧告でさえ、過去には処分を受けてほどなく復党し、要職に就いたケースが多い。身内の処分の限界は明らかだ。

 安倍派の裏金化に深く関わった疑いがある森喜朗元首相に対し、岸田氏は電話で関与がなかったことを確認したというが、やりとりは明かしていない。

 二階氏の処分見送りは、次期衆院選への不出馬表明を理由とした。個人では不記載額が最多の約3500万円で、党幹事長時代に手にした47億円もの政策活動費の使途に疑義が残るにもかかわらず、不問に付した。

 党内の有力者に配慮した処分の全体像からは、9月の総裁選で再選を狙う岸田氏の保身と打算が透けて見える。

 事件の焦点は安倍派の裏金づくりの開始時期と、中止を決めながら再開した経過だ。国会の政治倫理審査会や党幹部の聴取も行われたが、派閥幹部は「知らぬ存ぜぬ」を通している。

 真相究明に向け、自民党は野党が求める全ての関係議員の政倫審出席、幹部議員や森氏の証人喚問に応じるべきだ。

 衆院では政治資金規正法改正に向けて特別委員会が設置される。企業・団体献金の禁止などを制度化し、政治とカネの問題で繰り返してきた「抜け穴」を今回こそふさがねばならない。

 岸田氏は自らの責任の取り方について「政治改革の取り組みを国民に判断してもらう」と語った。甘い処分で幕引きを図ろうとし、規正法改正の案すら示せていない現状では、覚悟は伝わらない。

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