社説:ガザ戦闘半年 停戦へ米国の責任重い
京都新聞 / 2024年4月10日 16時5分
パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスとイスラエルの武力衝突が始まって半年が過ぎた。
ガザ側の犠牲者は3万3千人を超え、餓死者が相次ぐなど人道危機が深まっている。イランなど周辺を巻き込んで、緊張がエスカレートする懸念も強まっている。
一刻も早い停戦へ、国際社会があらゆる力を尽くさねばならない。
引き金は昨年10月、ハマスがイスラエルの住民約1200人を殺害した奇襲だった。許されぬテロで、人質は即解放すべきだ。
イスラエル軍は報復でガザ全域に空爆と地上侵攻をした。国際法に反し病院や学校、避難所を容赦なく攻撃し、犠牲者の70%が女性と子どもという惨状である。
過去の衝突は1カ月前後でほぼ収束していた。「ハマス壊滅」を掲げるネタニヤフ政権はガザ住民や人質の命も顧みず、明らかに度を越して激化させており、蛮行と言わざるを得ない。
ガザ内への物資搬入も厳しい制限を続け、人口約220万人の半数が「壊滅的な食料不足」の淵にある。今月1日には、民間の食料支援団体メンバーがイスラエル軍の攻撃で死亡した。他団体も活動休止し、危機が極まりかねない。
ネタニヤフ氏は、人質解放が進まない状況に国内の批判も強まっている。自身の汚職裁判を抱え、戦闘の継続は政治的延命の思惑があるとされる。
さらにハマスや周辺の敵対勢力を支援するイランに対し、シリア内の大使館を空爆して司令官らを殺害した。イランは報復を公言し、主権侵害の公館攻撃に周辺各国からの非難が相次いでいる。
国連は、特別報告書で「ジェノサイド(民族大虐殺)」としたガザの事態を止められずにいる。大きな責任はイスラエル支援を続ける米国にある。批判の高まりから先月、安全保障理事会は即時停戦を求める決議を初採択した。拒否権で過去4回退けた米国も、棄権にとどめざるを得なかった。
バイデン大統領もガザでの民間人犠牲に批判を強めるが、軍事支援の見直しには踏み込んでいない。
イスラエルは100万人以上が避難する最南部ラファへの侵攻を行う構えで、さらなる犠牲が憂慮される。停戦の実現へ米国が決定的な影響力を行使すべきである。
訪米した岸田文雄首相は、10日にバイデン氏と会談する。「同盟強化」を世界に発信するというが、中東の人道危機と緊張の緩和への役割を迫ってこそ、国際社会の信頼を得られるのではないか。
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