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社説:有機フッ素の規制 被害予防優先で取り組みを

京都新聞 / 2024年4月13日 16時0分

 発がん性など健康への悪影響が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)が各地の河川などから高い濃度で検出され、住民に不安が広がっている。

 環境省が2022年度に行った水質調査で、PFASの一種である「PFOS」と「PFOA」が、京都府を含む全国16都府県の河川や下水など111地点で国の暫定目標値(合算で1リットル当たり50ナノグラム)を超えていた。

 綾部市の河川で昨年8月、福知山市の浄水場では同10月、国の暫定目標値を大きく上回るPFASが検出された。

 ところが、国の取り組みはPFASの免疫機能や生殖機能への影響研究などの段階にとどまっている。研究結果を踏まえて水質管理の暫定目標値を見直すかを決める方針だが、あまりに迅速さに欠ける。

 PFASは水や油をはじく性質があり、フライパンなどの生活用品から半導体製造装置や泡消火剤まで幅広く活用されているだけに、産業界には規制強化に慎重論が根強い。政府の腰の重さにつながってはいないか。

 対照的に米国は10日、法的拘束力のある飲み水の基準値を決めた。

 PFASは数千種類以上あるとされ、米環境保護局(EPA)はPFOSとPFOAについては基準値をそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムに設定し、それ以外の物質についても1リットル当たり10ナノグラムの基準にした。

 注目すべきは、PFOAとPFOSについて、本来なら触れるべきではなく「安全な摂取量は存在しない」と明記したことだ。

 自然界で分解されず、体内に取り込めば排出されずに蓄積される。健康被害は確認されていないが、発がんリスクなどを指摘する声がある。

 人体と環境への悪影響が懸念される場合、予防的な措置を優先する米国の原則は、参考にすべきではないか。

 フロンガスのように一度普及したものの、後に毒性や環境への悪影響が分かり規制された化学物質も少なくない。

 日本では汚染源についても対応の不十分さが際立つ。PFASを使う工場や泡消化剤を保有する自衛隊、米軍基地の周辺で検出されているが、詳細には特定されていない。

 市民団体が先行して取り組んでいる人体や農作物への汚染の実態把握も、国が責任を持って実施すべきだ。

 米EPAによると、米国内の6万6千カ所の公共水道は今後3年以内に汚染状況の監視と公表が義務づけられる。施設の改修などが必要になる水道事業者へは連邦政府が資金を補助する。

 日本でもPFASが水源で高濃度で検出された場合の除去方法について環境省が夏にも指針を出す方針という。対策が自治体任せにならぬよう、資金面の手当ては欠かせない。

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