社説:機能性表示食品 業者任せが被害招いた
京都新聞 / 2024年4月19日 16時0分
「紅こうじ」の成分を含むサプリメントの健康被害問題に端を発し、機能性表示食品制度に対する信頼が大きく揺らいでいる。
事業者の責任で届け出れば認められる手軽さの陰で、食の安全が軽視されていたのではないか。
消費者庁は制度の在り方を巡る専門家検討会をきょう立ち上げる。健康被害の報告義務付けや消費者向けの迅速な情報提供など、抜本的な見直しが欠かせない。
小林製薬(大阪市)が製造した紅こうじサプリを摂取し腎疾患を発症した人が相次ぎ、5人が亡くなり、200人以上が入院した。
さらに、消費者庁が3月時点で機能性表示食品として届け出のある約1700事業者、約6800件を緊急点検した結果、35製品で計147件の健康被害報告があったことも判明した。
当初から「事業者任せ」と懸念されていた安全性の確保や効能表示の妥当性に加え、健康被害が生じても報告が努力義務にとどまるずさんさも浮き彫りになった。
健康のためにと効能を信じて長期間、毎日サプリを飲み続ける人は少なくない。だからこそ原因や因果関係が不明でも、健康被害の速やかな報告や対応は不可欠だ。
同制度は事業者の責任で安全性や科学的な根拠を示して消費者庁に届ければ、「体脂肪を減らす」「血圧を正常にする」といった体への効能を表示できる。
2015年に安倍晋三政権が「アベノミクス」の成長戦略として導入した。国が審査する許可制の特定保健用食品(トクホ)なら申請から許可まで平均1年かかるのに比べ、事業者側の負担は格段に軽い。中小業者も参入しやすく、市場規模は7千億円近くにまで膨らんでいた。
問題発覚後、サプリ市場に縮小が見られ、消費者に動揺が広がっているのは間違いない。
制度は、規制緩和によって事業者の自己責任と市場のチェックに委ねるとの考え方だが、取り返しのつかない健康被害を防ぐのが大前提だ。犠牲者が出ており、このまま野放しにはできまい。
消費者庁は5月末をめどに制度の改善策を取りまとめるという。
トクホ同様に国が機能性表示食品にも責任を負う仕組みが欠かせない。積極的に不適切表示や健康被害の情報を集め、問題のある商品を排除する監視体制の強化を求めたい。
健康食品を摂取すれば、ただちに健康になるわけではない。消費者も確かな選択の目を持ちたい。
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