社説:再審法改正 冤罪被害の救済に不可欠だ
京都新聞 / 2024年4月21日 16時0分
冤罪(えんざい)の被害救済に向けた動きが党派を超えて高まっている。
刑事裁判をやり直す再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を目指す超党派の国会議員連盟が先月、発足した。
かねて不備が指摘されており、京都や滋賀を含む全国の地方議会でも法改正を求める意見書の可決が相次いでいる。
国会は、こうした機運を受けて速やかに議論を始める必要がある。
刑事訴訟法には500以上の条文があるが、再審規定(再審法)は19カ条しかない。100年前の旧刑訴法をほぼ踏襲した内容で、これまで一度も改正されていない。
再審の審理手続きを具体的に示していないため、捜査機関が事実上独占する証拠の開示は裁判官の裁量に任され、弁護側の冤罪立証の壁となっている。
再審開始決定が出ても検察官の不服申し立て(抗告)によって救済の道がなかなか開かれない、という問題も指摘されている。
与野党の党首も参加する議連はこうした論点を踏まえ、証拠の全面開示と、検察官の不服申し立ての禁止の2点にまず取り組むという。議論を深め、法改正につなげてもらいたい。
静岡一家4人殺害事件で犯人とされた袴田巌さんの再審請求審では、2014年に静岡地裁が再審開始を決定したが、検察の不服申し立てにより、再審開始まで9年もかかった。
滋賀県の日野町事件(1984年)では、無期懲役で服役中に亡くなった元受刑者の遺族が受け継いだ再審請求で、18年に大津地裁、22年には大阪高裁でそれぞれ開始決定が出されたが、検察の抗告によって最高裁の判断を待たされている。
再審開始決定で確定判決に疑義が生じた以上、冤罪被害の速やかな救済こそ求められる。
検察は有罪の確証があるなら、やり直し裁判を受け入れ、その場で堂々と有罪を立証すればいいはずだ。ドイツでは検察の抗告は認められていない。
日野町事件では、第2次再審請求審の裁判官が検察に指示し、一時は「不存在」とされた証拠が開示された結果、元受刑者の自白の信用性が揺らぐことになった。
証拠は捜査機関の独占物でなく、真相解明のための「国民の財産」である。公開は当然ではないか。
地方議会の声の高まりは、冤罪当事者や各地の弁護士会の訴えが、各地に浸透してきた証拠といえよう。
法務省や検察庁は「刑事司法の安定性」を重視する立場から改正に反対しているが、問題を直視しない独善的な姿勢は改めるべきだ。
重要なのは「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則にかなう、確たる再審制度にすることである
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