社説:規正法の改正 当事者意識ない自民案
京都新聞 / 2024年4月25日 16時5分
空前の不祥事への反省もなく、抜本的な是正にも目を背けるつもりなのか。
自民党が裏金事件の再発防止に向け、政治資金規正法の改正案をまとめた。
収支報告書の提出時に国会議員による「確認書」の添付を義務付け、会計責任者が不記載などで処罰された場合に限り、議員にも罰則規定を設けた。
裏金の温床となった政治資金パーティーの存廃や収入の透明化、使途の報告義務がない「政策活動費」の見直しには踏み込まず、検討課題にとどめた。事実上の棚上げといえる。
そもそも独自案を作らない方針を与党の公明党に追及されて転換した。28日の衆院3補選を前に形だけ整えたようにしか見えない。
問題の当事者としての危機感が全く感じられず、規制強化を明確にした他党と比べて中身の薄さが際立つ。
最大の課題は、カネを力の源泉としてきた「金権政治」からの脱却であるはずだ。
不記載や虚偽記載が判明したのは安倍、二階、岸田3派と議員約90人に上ったものの、立件されたのは議員3人のほか秘書、会計責任者の計7人で、各派閥幹部は免れた。
自民案は「連座制」に近い仕組みとして、議員にも罰則を科し、公民権停止を付記した。だが、それも会計責任者の処罰を前提とし、議員が必要な確認を怠った場合としている。適用のハードルが高く、限定されよう。
数少ない具体策ですら、早々に「抜け穴」が露呈している。再発防止策としての実効性がないに等しく、議論のたたき台として不十分である。
政業癒着の病根を絶つため、企業・団体献金の全面廃止を求める声が高まっている。だが、自民案には言及すらない。
使途の公開基準が緩い政治団体への資金移動や、かねて議論されてきた調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の支出公開に関しても先送りしている。
金権腐敗の政治を招く体質を改めるどころか、温存しようとする意図が透けて見える。
国会審議では、裏金づくりに深くかかわった森喜朗元首相への聞き取りについて、岸田文雄首相が記録も残さない甘い調査で済ませたことも明らかになった。
いまだ真相究明を尽くさず、その場しのぎを重ねるのでは、国民の信頼回復などあり得ない。
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