社説:教員給与の改革 「働かせ放題」枠組みなくせ
京都新聞 / 2024年4月30日 16時0分
こんな小手先の対策では、教育現場の疲弊は改善されまい。
公立学校の教員の処遇見直しを進めていた中教審の特別部会は、残業時間と連動する給与体系の導入を見送る素案をまとめた。残業代の代わりに上乗せして支給する「教職調整額」を、月額給与4%から10%以上にする内容だが、勤務実態に見合った引き上げ幅とは言い難い。
このままでは残業を抑制する動機は働かず、長時間勤務の是正は難しいだろう。
「定額働かせ放題」と批判され、残業の常態化を招く元凶とされるのが、教職調整額の支給を定めた教員給与特別措置法(給特法)である。1971年の制定当時の残業が月平均8時間だったとする調査を基に、一律4%の調整額が決められた。
管理職にすれば、残業時間に応じた超過勤務手当を支払わずに、仕事を指示することができる。業務の増加や複雑化が進む学校現場では、半世紀以上前に設けられた同法を廃止し、残業抑制につながる給与体系を求める声が強まっていた。
今回、特別部会は教員の労働について、職務なのか自発的な活動なのか切り分けが困難だ、として残業代の支給ではなく調整額の引き上げを選択した。
「先生の心意気」や仕事の特殊性を強調するような旧態依然とした発想に驚く。「サービス残業」の追認と受け取られても仕方がない。労働に応じた対価を払うのは国内外の常識であり、日本の教員だけが、なぜ蚊帳の外なのか。給特法の枠組みは残すべきではない。
教員の働き方改革は、待ったなしの状況だ。京都府教育委員会が府内公立校の教員を対象に2023年度に実施した勤務実態調査によると、1カ月当たりの残業時間は中学校で82時間56分で「過労死ライン」とされる80時間を超え、小学校でも68時間に達した。府教委が目標とする45時間以内はあまりに遠い。
長時間労働の是正には、膨れ上がった業務を減らす取り組みが要る。土日曜のいずれかをクラブ活動の休養日とする規定の策定や、運動会など定例行事の見直し、事務作業を担う業務支援員の配置などは奏功しつつある。ただ、指導案作成など教育活動の根幹を担う業務に関しては効率化に限度がある。
抜本策は教員の増員である。少子化を理由に慎重論が政府内に根強いが、学級の少人数化や発達障害の子への対応、産休・育休の取得拡大などで現場の負担は増している。中教審は、公立小中学校の教職員定数を定めた義務標準法の改正に向けた議論に乗り出すべきだ。
近年、「学校はブラック職場」とのイメージが定着し、教員志望者の減少傾向が加速している。優秀な人材が確保できないと、教育の質の低下に直結する。教員の給与体系と職場環境の一体的な改善を急ぎたい。
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