社説:与党の規正法案 政治不信への危機感乏しい
京都新聞 / 2024年5月11日 16時0分
昨年末から半年近く政界を揺るがしている裏金事件への対策が、こんな中途半端な内容とはあきれるばかりだ。
自民党と公明党が、政治資金規正法の改正に向けた与党案に大筋で合意した。
事件の温床となった政治資金パーティーに関し、券購入者名の公開基準額を現行の「20万円超」から引き下げるとしたものの、額は決めないままだ。
支出先が不透明な政策活動費は、政党から支払いを受けた政治家が使途を報告し、党が収支報告書に記載するとした。だが、具体的な開示の範囲は示していない。
カネの流れを透明化する上で踏み込んだ対策もなく、曖昧さばかりが目に付く。法の抜け穴をふさぐ抜本的な見直しとならないのは明白だ。
使途の公開基準が緩い後援会などに巨額の政治資金を移す問題に関しては、1千万円以上の寄付を受けた場合に限定して、国会議員関係政治団体と同じように公開させるという。
線引きの根拠が不明確で、脱法的ともいえる資金移動そのものの制限にはつながらない。
どこをみても政治改革の名に値しない。再発を防ごうという覚悟も手だても伝わらず、与党としての危機感が疑われる。
自民は衆院3補欠選挙の投票日が迫った先月下旬になって、形だけの改正案を整えた。パーティー券購入や政策活動費の見直しに関しては、具体的に言及していなかった。
補選全敗を受け、公明との協議でわずかに歩み寄っただけで、突きつけられた厳しい民意に向き合っているとは到底言えない。
公明は1月に改正案を示し、会計責任者らへの刑罰に議員が連帯責任を負う「連座制」の導入や、透明性の向上を強く主張していたはずではないか。
透明化に消極的な内容を容認した姿勢が問われる。連立政権の維持にきゅうきゅうとしているとしか映らない。
きのうは裏金事件を巡り、規正法違反の罪に問われた安倍派会計責任者の公判が始まった。被告は虚偽記入を認めたものの、法廷で真相がどこまで明らかになるかは見通せない。
司法とは別に、事件の全容を解明すべき自民はなお後ろ向きで、岸田文雄首相は指導力を全く発揮していない。その上、生ぬるい改正案しか示せないようでは、政治への信頼回復は遠のくばかりだ。
国会の会期は残り50日を切り、今後は衆参の特別委員会で与野党での議論が本格化する。
野党は政治資金パーティーの開催や企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止などを主張している。
自民の「金権体質」にしっかりと切り込み、結束して実効性のある法改正を実現せねばならない。
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