社説:災害関連死 自治体は本腰入れて対策を
京都新聞 / 2024年5月14日 16時0分
被災後の心身の負担が原因で亡くなる「災害関連死」が後を絶たない。「救えたはずの命」を守る対策に、国と自治体は本腰を入れて取り組まねばならない。
1月の能登半島地震で、石川県内で少なくとも100人の遺族が災害関連死の認定を申請していることが分かった。
県が公表している関連死「疑い」の15人を大幅に上回っている。認定申請数を明らかにしていない市もあり、実際はさらに多いとみられている。
1995年の阪神大震災後、大災害のたびに関連死の続出が問題になり、2016年の熊本地震では直接死の4倍以上の218人に上った。「防ぎ得た死」にいまだ有効な手だてがとられていない状況は見過ごせない。
災害関連死は避難生活の疲労やストレスなどが影響して亡くなり、災害が原因と認められた事例を指す。自殺も含まれ、認定されると直接死と同様、遺族に弔慰金が支給される。
防止策を進めるには原因の見極めが欠かせない。19年の法改正で、関連死を認定する審査会の設置を市町村が条例で定めることが努力義務とされたが、その整備状況は自治体によって大きな差がある。
全国の主要87市区を対象にした共同通信の調査では、大津など48%に当たる42市が、審査会の設置を条例で規定せず、制定した市でも20市が委員選定などの準備がまだだった。一定の備えがあるのは3割に満たない。
京都府では26市町村のうち8町が条例に規定がなく、滋賀県では19市町のうち規定があるのは守山市だけである。
医師や弁護士ら専門家による審査会の体制を整えている京都市などの自治体がある一方、条例はあっても具体的な計画がない市町も多い。これだけ災害が頻発する中、感度が鈍いと言わざるを得ない。
他県では過去に、市町村が災害対応に追われて審査会を設置できず、県に委託する事例もあった。しかし、地域の実情に疎ければ、災害と死亡の因果関係の糸をたぐるのは容易でない。
市町村が条例を整備し、審査委員の選定や職員研修を行うことで、住民に寄り添った審査が行えると専門家は指摘する。
ただ、発災後の小規模自治体にとって負担は大きい。熊本地震では、複数の市町村で合同審査会を開催した。能登地震でも石川県が一括して委員を人選するなどで支援を行う。
京都府は「市町村と連携を進める上で研究したい」とする。府県は多様なケースを考え、柔軟に市町村を補完してもらいたい。
災害関連死を防ぐには、避難所環境の改善や保健医療の充実が重要なのは当然だ。同時に、自治体間の連携を含め、あらゆる備えを想定する必要がある。審査会設置の規定はそのスタート点に立つことにつながろう。
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