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社説:離婚後の共同親権 子を守る家裁の体制、不可欠

京都新聞 / 2024年5月21日 16時0分

 当事者の中に根強い懸念が残されたままであり、子どもの不利益や混乱を避ける具体的な手だてが欠かせない。

 離婚後の親権制度を見直す改正民法が成立した。2026年に施行される見通しだ。

 これまでの父母のどちらか一方を親権者とする単独親権から、双方が子育てに関わる共同親権を選択できるようになる。

 別れた後も親としての責任を自覚し、共に子どもの養育に資することへの期待がある。

 一方、共同親権によってドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の被害が継続するとの不安も拭えない。子どもの安全を最優先に担保する体制整備が喫緊の課題だろう。

 改正法では、離婚後の親権の在り方は父母が協議で決定し、折り合えない場合は家庭裁判所が判断する。ただ、DVや虐待の恐れがある場合は単独親権と規定している。

 家裁が的確に家庭状況を把握し、判断できるかが焦点だ。

 家庭内の暴力は、多くは密室で行われるため立証、認定が難しい。これまでも親子の面会交流の申し立てで、DVの恐れがあっても家裁が却下する事例は限られていると専門家は指摘する。

 改正法は、既に離婚した父母も共同親権に変更申し立てができる。未成年の子のいる離婚は毎年約9万組にも上っており、家裁の対応力を超えないか。DVの見逃しが危惧される。

 判事、調査官の人員体制や、被害事例の研修を拡充することが不可欠である。

 共同親権の導入理由には、諸外国の大勢であることが挙げられた。だが、欧米では近年、離婚後の共同養育を強めた結果、別居親からの過干渉や面会時の危害が深刻化し、再見直しの動きもある。「他山の石」とし、子どもの安全確保に万全を尽くさねばなるまい。

 国会審議では、付則に「父母の真意を確認する措置を検討する」と盛り込み、5年後の見直しも追加した。

 ただ、子ども自身の意思は顧みられていない。当事者として丁寧に意見をくみ取る仕組みも検討すべきではないか。

 また、共同親権とした場合、子どもにとって重要な決定を迫られる局面で父母双方の同意が必要かどうかは曖昧さを残している。

 政府は、転居や進学先選びは双方の合意が必要とする一方、緊急手術といった「急迫の事情」や、「日常の行為」は単独で決められると説明する。混乱を招かないためにも具体例の明示が求められよう。

 改正法では、続出する養育費の不払い対策として、最低限の支払いを義務化する「法定養育費」を創設した。離婚後の子どもの利益を守り、親の責任について考える仕組みや講習なども制度に位置付けたい。

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