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社説:台湾新総統就任 対中対話で緊張緩和を

京都新聞 / 2024年5月22日 16時5分

 1月の台湾総統選で当選した民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が正式に新総統に就任した。

 頼氏は就任演説で中国との関係を巡り「傲慢(ごうまん)でもなく卑屈でもない態度で現状を維持する」と表明した。2期8年にわたる在任中、独立を訴えなかった蔡英文前政権の路線継承を明確に示した。

 総統選では、頼氏を含め、対中関係の大幅変更を訴えた候補はいなかった。民進党は立法院(国会)で過半数割れし、頼氏は内政でも難しいかじ取りを迫られる。

 頼氏は過去に「独立工作者」を自称したこともあるが、総統就任にあたり、安定を求める民意と厳しい政局を踏まえて、持論を封じ込めたとみられる。ただ、中国に対し、言論や武力による威嚇を批判し、独自色もにじませた。

 前政権は中国の挑発に乗らず、国際社会の関心を台湾海峡に集めることに成功した。この路線の継承は、地域の安定にとって重要な意味を持つといえよう。

 一方、中国は引き続き民進党政権を独立派として強く警戒する。習近平主席は台湾の最大野党、国民党の馬英九氏と4月に会談した際、「両岸(中台)関係は不可分」と強調し、就任前の頼氏を強くけん制していた。

 就任演説についても、中国外務相は「台湾独立は破滅への道」と威圧してみせた。しかし中国は、自らの強硬な姿勢が台湾の人々の対中懸念を強めていることを知るべきだ。

 頼氏は「共に台湾海峡と地域の平和と安定の維持に尽力」するよう呼びかけた。中国は地域の緊張緩和に責任があることを自覚し、対話に応じてもらいたい。

 気になるのは、米国の対応である。バイデン政権は台湾への武器売却を進める一方で、「中国は一つ」の立場は堅持する。

 しかし、共和党のトランプ前大統領周辺や米議会では対中強硬論が根強い。

 2022年8月に対中強硬派のペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問した際は、中国が大規模な軍事演習で応じ、緊張が高まった。偶発的な衝突につながりかねない行動は控えるべきだ。

 日本は「台湾有事」を想定した日米同盟の強化に前のめりだが、中国に武力行使の口実を与えるような動きに加担してはなるまい。

 頼氏は観光の往来や留学再開などにも意欲をみせる。中台の文化や経済交流の発展は、中国にも利益になるはずだ。頼氏は粘り強く中国との対話を模索してほしい。

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