社説:森林環境税 地域特性に応じ配分を
京都新聞 / 2024年5月24日 16時0分
森林保全という目的にかなっているのか。財源の配分や使途について議論が必要だろう。
6月から「森林環境税」の徴収が始まり、1人当たり年間千円が個人住民税に上乗せされる。東日本大震災後に創設された復興特別税の終了に代わって、同額の負担が続く。
税収は年約600億円を見込み、先行して国が2019年度から都道府県と市町村に交付してきた「森林環境譲与税」の新たな財源となる。
日本の国土の3分の2は森林が占める。林業の衰退による荒廃を食い止め、土砂災害の防止や温室効果ガスの排出削減につなげる取り組みは不可欠だ。
しかし、森林環境譲与税の現状をみると、財源を十分に活用できているとは言い難い。
22年度までの4年間で市区町村に配られた1280億円のうち、約4割が事業に充当されなかった。173自治体は22年度、全額を基金に積み立てただけである。
活用が低調な要因は、配分方法にあるのではないか。これまでは人工林面積に応じた分が50%、人口が30%などで、森林の少ない都市部も交付されてきた。
横浜市と大阪市には3億円前後が入っているが、公共施設の内装や備品の木材活用にとどまる。東京都渋谷区は毎年約2千万円の交付分をそのまま積み立てている。
優先すべき対策は、放置山林の拡大防止や遅れている土地境界の画定、担い手確保のはずだ。今回から人口分を25%に引き下げるが、弥縫(びほう)策に過ぎない。
全国一律の基準で配分するのではなく、森林面積の分を手厚くした上で、地域特性に沿って思い切って重点的に投入する方法も検討すべきだ。森林は水源ともなっており、都市の住民の理解も得られよう。
国の森林環境税とは別に、京都府や滋賀県などでは、同じく森林保全を目的に個人が年数百円を払う府県税をすでに導入している。
国税は私有林の経営管理支援に重点を置き、各府県税は防災などに役立てていると説明するが、明確な仕分けは難しい。納税者には「二重課税」と映るだろう。
十分な議論がないまま国税の導入を決め、府県税もつじつまを合わせるように継続している面が否めない。
森を守るには持続的に管理する体制が不可欠だ。関心を持つ都市住民と山間部を橋渡しするなど、保全に関わる主体を広げる工夫も求められる。
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