社説:政府基金見直し 放漫財政を正す改革に
京都新聞 / 2024年5月24日 16時5分
放漫財政を生むブラックボックスであるのは明白だ。緩んだ財政規律を正すために実効性のあるルールが欠かせない。
政府は、複数年度にまたがる政策を行うために設立する国の基金の見直し案をまとめた。
新型コロナウイルス対策で大きく膨らみ、執行されずに放置されている事例が目立つため、昨年12月から総点検していた。
見直し案で、152基金が実施する200事業のうち廃止を決めたのは、2023年度に実施済みの4事業を含め15事業にとどまった。既に補助金支給という役割を終え、管理費だけを支出し続ける休眠状態の事業が多いという。
使う見通しがないと判断した5400億円以上を国庫に返納させるというが、点検前に返納のめどが立っていた分を除くと、2300億円余りに過ぎない。22年度末で全体残高が16兆6千億円に上ることを考えると、微々たる額だ。
国の基金は、19年度まで2兆円台で推移していたが、その後3年間で7倍以上に膨らんだ。コロナ禍で、政権が経済対策の規模を大きく見せることを優先し、各省庁が基金を乱立させたのが要因だ。
国の予算は原則、会計年度ごとに編成され、国会の審議と議決を経る。一方、基金は、予算の単年度主義に縛られず、中長期的な事業の実施に適しているとされる。
しかし、独立行政法人などが業務を担うため、政府予算に比べ、国会の監視も届きにくい。憲法に基づく財政民主主義の観点から、「例外」とすべきものだ。
野放図な支出を防ぐため、基金創設には10年以内で事業終了時期を設定するなどの基準がある。だが実際は、3割の基金が期間を定めず、成果目標もない事業があった。ルーズな運用にあきれる。
存続する基金には、半導体生産や脱炭素を進める事業のほか、有識者から「安易な支給が目立つ」と指摘された中小企業向け基金も含まれる。実態を丁寧に検証し、精査しようという真剣さは感じられない。
財政制度等審議会の建議も、厳しい検証と、効果のない事業は廃止を含め速やかに見直すよう注文を付けている。
運営に官僚OBや与党議員、業界幹部らが絡む基金もあり、廃止には抵抗も根強い。岸田文雄首相は行財政改革に取り組む姿勢をアピールするが、既得権に踏み込む改革こそ求められよう。
基金の存廃や運営基準を厳格にし、透明性の向上と国会による監視も強化すべきである。
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