「本当にギリギリ」川で流された女性を72歳男性が救助 川べり300メートル疾走
京都新聞 / 2024年5月25日 7時0分
24日午前8時20分ごろ、京都府宇治市宇治の宇治川で女性(45)が流され、近くにいた男性らが救助した。宇治署によると、女性は病院に搬送されたが命に別条はないという。流される女性を走って追い、自らも川に入って助け出したのは70代の男性だった。
京都市伏見区向島の大谷猛さん(72)。平等院近くにある朝霧橋のたもとで、草刈りを始めたところ、橋の上から大きな声が聞こえた。宇治川の方に目をやると、下流へ流されていく人の姿が見えた。
近くに住む女性が散歩中に足を滑らせ、川に転落した事故だった。当初は「子どもが流された」との声も。瞬間、40年ほど前に川で流された長男を助けた記憶がよみがえった。
ごつごつとした石畳の道を300メートル以上、一心不乱に走った。女性が岸に近づいたタイミングで、自身も川に入った。流れは早く、薄濁りで水深も分かりにくい。大谷さんは10代の頃、鹿児島県で漁師をしていた。足を踏み入れることにためらいはなかった。
腰まで水に漬かり、女性が伸ばした手をつかんだ。「あと5センチ離れていたら難しかった。本当にギリギリだった」。別の男性に体を支えてもらい、なんとか女性を引き揚げることができた。
ずぶぬれになった服を自宅で着替え、草刈りのアルバイトに戻った。「人ひとりの命が助かったのは、本当に尊いこと。助けている時は無我夢中だったけど、後になってよかったなあと思えてきました」。観光客の姿もまだまばらな朝方に人知れず起きた救出劇を、しみじみとした表情で振り返った。
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