社説:ガソリン補助延長 「出口」への道筋を示すべき
京都新聞 / 2024年5月26日 16時0分
政府は、電気・ガスの価格抑制策を今月末で終える一方、ガソリンや軽油などの燃油代補助は中東情勢の緊迫化による原油価格の高止まりを理由に当面続ける姿勢だ。
ずるずると延長を繰り返し、費用対効果も「出口」への道筋も曖昧な政策に巨費を投じ続けるのは無理がある。手じまいを明確にすべきだ。
ガソリン補助は、ロシアのウクライナ侵攻などを背景とした原油高への対応策として2022年1月に導入された。
家計や企業の負担を和らげる施策とはいえ、既に予算措置は約6兆4千億円に膨らんだ。23年1月の使用分から始まった電気・ガス向けの補助金を含めると10兆円を超えている。
岸田文雄首相は当初、緊急避難的な2カ月程度の「激変緩和」措置と説明していた。
だが、延長を重ね、ようやく電気・ガス代補助だけ廃止されるが、ちぐはぐ感が否めない。
5月以降も7度目の延長となったガソリン補助だが、今回は「経済情勢を見極めるため、一定期間」として打ち切り時期さえ示さなかった。一度始めた補助金をやめられない悪弊にほかならない。
国の財政負担が増し、そのつけが将来世代に回るのは間違いない。
物価高騰に伴い24カ月連続で実質賃金が目減りし、家計を圧迫している。流通コストなどを価格に転嫁しにくい中小企業も多い。確かに急激なエネルギー価格高騰による国民の痛みを和らげる効果はあった。
だが、ガソリンに偏った補助は車を使わない人らとの公平性を欠く。富裕層や好業績の企業にも一律に恩恵が及ぶ「ばらまき」でもある。
石油元売り会社への補助金を通じて小売価格を抑える手法が、効果に十分に反映されているか疑問の声は根強い。
とりわけ、こうした補助が市場原理をゆがめる弊害は看過できない。価格が上がれば消費を節約する作用が働くが、公費でガソリン価格を支え続ければ消費量は減りにくくなる。
気候変動対策に悪影響を及ぼす補助金をなくそうとする世界的な潮流にも逆行する。
それでも廃止に踏み切れない背景には、岸田氏が衆院の解散・総選挙を探る中、低迷する内閣支持率を浮揚させたい政権の思惑が透ける。しかし、際限なく公費を投じる弊害はあまりに大きい。
公費で丸ごとエネルギー価格を調整するより、高騰のしわ寄せが大きい低所得世帯や中小の関係事業者に絞った負担軽減や支援策に転換すべきであろう。
併せて化石燃料への依存低減や円安是正、継続的な賃上げなど構造的な改革も欠かせない。
政府には国民の負担増に目配りしながら、政策の正常化に向けたかじ取りを求めたい。
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