社説:日中韓首脳会談 対話継続で東アジア安定を
京都新聞 / 2024年5月28日 16時0分
4年半ぶりとなる日中韓首脳会談が、韓国で行われた。懸案を抱えつつも再開した対話を継続し、東アジアの安定につなげねばならない。
日本の岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の正式会談は初めてだ。
共同宣言では、3カ国の協力の深化がそれぞれの国や国民に利益をもたらすとし、首脳会談と閣僚級会合を定期的に開くことで日中韓協力の「制度化」に努めると明記した。
トップ間の信頼醸成につなげ、安定化への道のりを後戻りさせないためにも、次の議長国となる日本の手腕が問われる。
東アジア情勢の大きな課題は、北朝鮮への対応である。
岸田氏は会見で「非核化と朝鮮半島の安定が日中韓の共通利益と確認した」と述べたが、共同宣言では「それぞれの立場を強調した」との記載にとどまった。「完全な非核化にコミット(関与)している」とした前回文書と比べ、後退は否めない。
北朝鮮は核・ミサイル開発を強化し、今回の会談に合わせるように軍事偵察用とみられる「人工衛星」発射を予告した。
不安定な情勢の改善へ鍵となるのは中国の関与だが、ウクライナ侵攻以降のロシアや、北朝鮮との関係を深めている。対する米国が防衛面で日本や韓国と連携を強化する動きへの警戒が、背景にある。
台湾では「一つの中国」を認めない頼清徳政権の発足を受けて大規模な軍事演習も展開した。日本やフィリピンに対しては公船による領海侵入を繰り返し、威圧的行動を強めている。
共同宣言は「法の支配に基づく国際秩序へのコミットメントを再確認した」と明記した。地域安定への3カ国協力の役割を踏まえ、緊張緩和への具体策につなげねばならない。
一方で宣言には、中断していた3カ国の自由貿易協定(FTA)締結交渉を加速させる方針を盛り込んだ。
会談で李氏は「世界の多極化を推進し、陣営化に反対する」と述べた。自国の経済成長が鈍化する中、米国主導の「対中包囲網」をけん制した。
ただ、3カ国はそれぞれが上位の貿易相手国であり、ルールに基づく互恵関係の構築を図っていくことが重要だ。
岸田氏は李氏との個別会談で、福島第1原発の処理水海洋放出を受けた日本産水産物の輸入停止措置の撤廃を要求した。
処理水を巡る事務レベル協議の加速では一致したが、目立った前進はなかった。スパイ容疑で拘束されている邦人の解放も見通せない状況が続く。
昨年11月の岸田氏と習近平国家主席との会談から進展がなく、打開には再会談が欠かせない。日韓関係の改善とシャトル外交が連動したように、ハイレベルの対話を積み重ねていく必要がある。
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