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社説:教委の傍聴妨害 裁判公開の原則を軽視

京都新聞 / 2024年5月29日 16時0分

 「裁判公開の原則」を妨げるとは言語道断だ。

 横浜市教育委員会が、教員による児童生徒に対する性犯罪事件の公判に職員を大量動員し、一般市民の傍聴機会を封じていた。

 教育行政への信頼を大きく損ねる行為であり、組織ぐるみで行った経緯など徹底検証を求めたい。

 市教委によると、横浜地裁で2019、23、24年度に審理された4件の刑事裁判計11回、延べ525人に傍聴を命じていた。いずれも教員の児童らへの強制わいせつや不同意性交事件で、動員は地域別にある学校教育事務所に指示。これに応じて多くの職員が業務扱いで地裁を訪れ、給与や交通費を支給されたという。

 憲法第82条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と定めている。特別な理由がない限り、裁判は原則公開であり、誰もが傍聴できる。国民の監視の下で裁判が行われてこそ、公正さが担保されるからだ。

 だが、市教委は「傍聴席数と同等の人数に呼びかけていた」という。一般傍聴を妨げる意図があったのは明らかで、行政機関が公開の原則をないがしろにしていた。

 集団での傍聴が分からないよう裁判所での待ち合わせや、事件に関する話題を避けるように―などと文書で偽装を指示していたというからあぜんとする。当時の教育長も了承し、不適切であると分かりながら誰も異を唱えることなく傍聴妨害を繰り返していたことに、事態の深刻さがうかがえる。

 市教委は、動員は被害者側の要望で「プライバシー保護のため」だったと釈明し、加害教員をかばう意図は否定する。だが、説明には多くの疑問符が付く。

 性犯罪などプライバシー保護が求められる事件では、裁判所の判断で被害者の氏名や犯行場所などを伏せることが多い。実際、今回も匿名措置が講じられていた。教員が加害者でない場合は動員の対応をしておらず、「教師の犯罪」を衆目から隠そうとしたと疑わざるを得ない。

 先月就任した下田康晴教育長は「社会的な感覚がずれている。非常識と言わざるを得ない。抜本的に組織を見直す」として、今月中に弁護士3人による検証チームを立ち上げる。

 これまでの内部調査では、曖昧な部分が多い。教育と相いれない不公正がまかり通った組織体質を改めるには、動員に至った経緯や経費を支出した是非、法的、道義的な責任の所在といった問題点を掘り下げて解明してもらいたい。

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