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社説:高浜40年超運転 なし崩しは認められぬ

京都新聞 / 2024年5月31日 16時0分

 世界最悪レベルの過酷事故と、度重なる災害の痛苦の教訓をないがしろにするのか。

 2025年に運転開始から40年となる関西電力高浜原発3、4号機を巡り、原子力規制委員会はさらに20年の運転延長を認可した。

 11年の東京電力福島第1原発事故を受け、原発の運転期間は「原則40年」と決められた。老朽化のリスクを下げ、脱原発を見据えたルールである。

 だが、政府が原発利用に回帰する中、「極めて例外的」とされていた20年延長の規定が常用されつつある。既に適用された高浜1、2号機、美浜3号機と合わせ福井県内5基をはじめ全国計8基の延長申請が全て認められた。

 同じ北陸での能登半島地震は、原発施設や避難計画の危うさを再認識させた。近接する京都、滋賀を含め広範囲の住民被害への不安を置き去りに、なし崩しで老朽原発を使い続けるべきではない。

 原発設備は放射線でもろくなりやすく、停止中も経年劣化が進む。40年以上前の設計は古く、交換できない心臓部の原子炉容器などの限界の予測は困難とされる。特に高浜3、4号機は通常より放射線が強い燃料を使うプルサーマル発電をしており、負荷が高い。

 世界最長の運転例は54年で、未知の要素は否定できない。ところが岸田文雄政権は「原発の最大限活用」を掲げて昨年、さらに60年超運転も可能に法改正した。原則40年の枠組みのまま、安全審査などで停止した期間を除外できる。

 心配なのが、能登地震で顕在化したリスクへの対応だ。日本海側の海底活断層が連動して広く動いた可能性など、規制委は「新知見を取り入れねばならないが、年単位で時間がかかる」とする。

 震源に近い志賀原発で外部電源関連などの設備が損傷したのも見過ごせない。安全性評価の総点検が必要だ。

 周辺住民は、多数の住宅倒壊や道路寸断によって、避難計画で定めた屋内待避や避難路を使えない実態も浮き彫りになった。高浜原発の30キロ圏には京都、滋賀の計8市町も入る。地震や津波との「複合災害」に実効性を欠く現在の備えで、住民の安全を守れるのか。

 政府と大手電力は、原発活用による脱炭素や電気料金値下げの効果をうたうが、重大事故で取り返しのつかない災禍が続くことは、収束の見えない福島の現実が示している。行き場の決まらない核のごみ処理を含め、将来に持続可能なエネルギーとはいえない。

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