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社説:定額減税 透ける政権浮揚の底意

京都新聞 / 2024年5月31日 16時5分

 定額減税が来月から始まる。

 賃金上昇が物価高に追いつかない中、個人消費を促す岸田文雄首相肝いりの施策だが、借金頼みの一時的な「還元」の妥当性に加え、経済効果も甚だ心もとない。

 低迷する内閣支持率を浮揚させたい政権の底意が透け、給与明細へ減税額記載を強いるなど恩着せがましさにも違和感が拭えない。

 減税は物価高に苦しむ家計支援が目的で、会社員らの場合、1人当たり所得税3万円と住民税1万円が、6月支給の給与や賞与の税額から順次差し引かれる。例えば納税者と配偶者、子ども1人の世帯なら合計12万円の減税となる。

 年収2千万円を超える富裕層は対象から除外されるが、上位1%程度に限られ、形ばかりの所得制限に過ぎない。非課税の低所得者世帯には7万円が給付される。

 現金給付と比べ実感が湧きにくい。政府の補助金終了による電気料金の引き上げと重なり、果たして暮らしの余裕につながるかどうか見通せない。

 看過できないのは、減税や支給の実務負担の重さから企業や市町村に懸念が広がっている点だ。

 政府が春闘の賃上げとの相乗効果を狙い、夏季賞与の支給に合わせて実施を急いだため、周知や準備に混乱を招いている。

 岸田氏が「減税」に拘泥するあまり、仕組みが複雑になった。給与から源泉徴収する税額を差し引いたり、所得が少なく減税額が本来の税額を上回る世帯に「調整給付」をしたり、と事務量が大きく膨らんでいるという。

 とりわけ、給与明細に減税額を明記するよう義務付け、さらに煩雑に。「減税の恩恵」(岸田氏)を国民の目に焼き付けたいのだろうが、政権の独善が過ぎる。

 政府は定額減税を1回限りと説明する。ところが、衆院解散・総選挙や来夏の参院選を意識して、早くも岸田氏の側近から継続の声が上がり始めた。無節操さにあきれる。

 そもそも定額減税は昨年秋、岸田氏が所得税・住民税の増収分を還元するとして唐突に決めた。防衛費倍増など増税イメージを薄める意図があったとされるが、結局、主な財源は借金で、経費は給付を含め5兆円を超える。「ばらまき」に他ならず、生活困難者らに絞った支援策を講じるべきだ。

 共同通信の世論調査(昨年11月)で定額減税を「評価しない」が62.5%を占めた。場当たりな大盤振る舞いで歓心を買う「選挙目当て」が見透かされている。

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