社説:能登地震5カ月 余震でリスクあらわに
京都新聞 / 2024年6月5日 16時0分
能登半島地震は発生から5カ月が過ぎた。おとといは被災地が最大震度5強の揺れに襲われ、傾いたままだった家屋が倒壊し、復旧の遅れを浮き彫りにした。これ以上、被害を拡大させないための対策を急ぐべきだ。
石川県は先月、避難中などの心身の不調による「災害関連死」の審査を市町と開始し、30人を認定した。犠牲者は直接死を含めて計260人となった。
学校や公民館などの1次避難所は110カ所ほど残り、なお約1700人が身を寄せている。ビニールハウスなどの自主避難所で寝起きする人もいる。
整備が遅れていた仮設住宅は、先月末時点で必要数の7割近くまで完成した。ただ、輪島市では入居者の70代女性が室内で孤独死する事態も起きた。
梅雨期が迫り、熱中症の危険も高まる。「防ぎ得た死」を繰り返さぬよう、きめ細かな見守りと支援を徹底する体制の拡充が欠かせない。
住宅被害は5県で12万棟を超えた。先の余震では、損壊したままの建物の解体遅れが、二次被害を生むリスクがあらわになった。
石川県は全半壊した建物を所有者に代わり撤去する「公費解体」の対象を来年10月までに約2万2500棟と想定している。しかし、これまで約1万6千棟の申請のうち、解体できたのは約380棟(先月末)にとどまっている。
原因は複雑な手続きと工程にある。解体申請にも必要な住宅の被害認定では不服申し立てが相次ぐものの、専門人材の不足で調査が進んでいない。住まいの再建をてこ入れするために国や他府県がいっそうの支援に動くべきだ。
国は所有者全員の同意がなくとも市町の判断で解体できると最近になって通知したが、当初から指摘されていた課題だけに、対応が後手に回ったのは否めない。
石川県は今月中にも復興プランをまとめる。案では、避難の長期化で人口減の加速が懸念されるため、都市と地方を行き来する「2地域居住」の推進を打ち出した。
道路や上下水道などの本格復旧の完了には、2028年度中までかかるとしている。
復興どころか、現状は復旧の途上にある。大規模な土砂崩落のため県が居住を禁じる「長期避難世帯」となった住宅もあり、ふるさとを離れざるを得ない人もいる。
住まいと暮らし、なりわい再建の道筋を示し、寄り添って支えていかねばならない。
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