社説:原作者の権利 第三者の検証、防止策を
京都新聞 / 2024年6月6日 16時0分
生み育てた作品を大切にする著作者の権利と思いを軽んじていたのではないか。
テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった問題で、ドラマを制作した日本テレビと、原作漫画を刊行した小学館がそれぞれ調査結果を公表した。
日テレの報告書では、小学館を通じて「漫画に忠実に」とした芦原さんの要望を、「強い要求」と認識せず、食い違いからトラブルが生じたとした。小学館は、要望に応じなかったと日テレの対応を問題視した。
ただ、どちらも内部調査で自己弁護に終始した感は否めない。繰り返さぬため、第三者による包括的な検証が不可欠だ。
ドラマは昨秋から3カ月間、放送された。脚本家が交流サイト(SNS)で芦原さんが終盤の脚本を書いたことに不満をにじませたのに対し、芦原さんはドラマ化の条件が守られなかったなどと経緯を説明した。
SNS上で制作側への批判が巻き起こる中、芦原さんは自死したとみられる。
双方の報告書では、原作者と制作側で意思疎通ができていなかったことが浮き彫りとなった。
芦原さんが原作の連載を続ける中のドラマ化で、制作過程での人物像のぶれや重要シーンのカットに不信感を募らせた。小学館を通して問い合わせた場面の撮影について、制作側から「撮影済み」などとうその説明もあったという。要望を軽視し、確認を怠った無責任体質に大きな問題があろう。
原作者には「著作権」と、作者の意に反して内容を改変されない権利「同一性保持権」を含む「著作者人格権」がある。
2022年に公開された映画「天上の花」で脚本を同意なく書き換えられ、著作者人格権を傷つけられたとして、脚本家が、指導を受けた共同脚本家に賠償を求めた裁判では先月下旬、大阪地裁が賠償を命じた。
ドラマや映画の現場では、制作側が優位な立場にあり、打ち合わせや合意の内容は曖昧な点が多い。対等な立場として契約文書に明記するなど、構造的な見直しが求められる。
原作者や制作スタッフが、権利や契約に関する知識を共有することも必要だろう。
今回、原作者や脚本家がネット批判の矢面に立たされたことも問題だった。クリエーターを守る体制づくりが急務だ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
第2の「セクシー田中さん」が生まれるだけ…「芦原さんの死は日テレのせい」という安易な決めつけが危険な理由
プレジデントオンライン / 2024年6月21日 16時15分
-
NHK会長 原作ある作品の映像化について見解 「セクシー田中さん」問題の調査報告受け
スポニチアネックス / 2024年6月19日 14時55分
-
なぜ日テレは「若くて経験不足の担当P」だけの責任にするのか…「セクシー田中さん」報告書の根本問題
プレジデントオンライン / 2024年6月7日 16時45分
-
日テレに続いて小学館も...芦原妃名子さんは「難しい」 「セクシー田中さん」報告書が波紋
J-CASTニュース / 2024年6月4日 18時53分
-
小学館「セクシー田中さん」報告書で日テレ側の姿勢を疑問視 今後のドラマ化再タッグは消滅か
東スポWEB / 2024年6月4日 5時28分
ランキング
-
1市議のマイナカード偽造しスマホ機種変 詐欺などの容疑で39歳逮捕
毎日新聞 / 2024年6月28日 20時27分
-
2〈那須2人殺害〉「ワタシ逮捕されるかもしれない」そう部下に話していた長女は事件1カ月後に会社社長に就任していた「両親が大切にしていた店は続けていきたい」でも「日々やつれた様子だった」
集英社オンライン / 2024年6月28日 17時8分
-
3辺野古の警備員死亡事故「極めて遺憾」 玉城デニー知事、安全確保まで土砂搬入の中止要請へ
沖縄タイムス+プラス / 2024年6月28日 17時36分
-
4〝選挙〟妨害や「ポスタージャック」で公選法改正求める声 専門家は「議論する機会だ」
産経ニュース / 2024年6月28日 21時55分
-
5小学5年生の請願、大和市議会が全員賛成で採択…市の計画に「子どもの意見反映」求める
読売新聞 / 2024年6月29日 8時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください