社説:規正法衆院通過 抜け穴残し先送りでは
京都新聞 / 2024年6月7日 16時5分
肝心の中身が軒並み「後から検討」の法案を通すのは、無責任に過ぎる。改革には程遠く、国民の政治への不信は拭えまい。
政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、自民党が3度修正した改正案が衆院本会議で可決され、参院へ送られた。
自らの不祥事への甘さから孤立した自民は、公明党と日本維新の会の主張を取り入れて賛成に引き込み、今国会での法改正に見通しを付けた形だ。
ただ、急転直下の党首会談での合意と異なるとして維新が直前に反発。一度決めた採決日程をずらし、さらに修正するという異例のドタバタ劇での衆院通過である。
数合わせを優先し、内容を詰めないままの生煮えであることを如実に物語っていよう。
政党から議員に支給される政策活動費では、上限額を定め、10年後に領収書などを全面公開するとした維新案が、自民案の付則に取り込まれた。支出を監査する第三者機関の設置も「検討する」と付則に記した。
だが10年後の公開では、不正が発覚しても規正法の公訴時効5年を過ぎて罰せられない。それまでの監視も責任追及もおよばないのでは、実効性は望めない。
岸田文雄首相は「具体的なルールは成立後に検討される」と繰り返す。上限額や領収書公開の制度設計、違反への対処、第三者機関の設置も、期限を定めず「今後検討」というだけでは、単なる問題の先送りに他ならない。
そもそも10年後の根拠や、自民以外が不要とする政活費の存続に納得のいく説明はなく、「ブラックボックス」の温存ではないか。
パーティー券購入者の公開基準は、現行の1回当たり「20万円超」から、公明などが求めた「5万円超」に引き下げた。ただ、開催回数を増やせば、匿名で企業・団体からのカネ集めが継続できる抜け道は残ったままだ。
業界との癒着や政策のゆがみを招いた数々の汚職事件を踏まえれば、パーティー券購入を含めた企業・団体献金の全面禁止こそ「不正の温床」を絶つ本丸である。
これに向き合わない自民は言うまでもなく、抜本改革を遠ざける弥縫(びほう)策に手を貸した公明、維新の責任も重大だ。
野党側が批判する「抜け穴だらけ、先送りだらけ」のままで改革のお茶を濁すことは許されない。
参院での徹底審議で具体策とその実効性を見極め、国民の信頼を取り戻せる見直しにすべきだ。
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