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社説:生活道路30キロ規制 歩行者と共存へゆっくりと

京都新聞 / 2024年6月9日 16時0分

 「歩く人優先」を一歩でも進めてもらいたい。交通弱者にとって朗報と言えよう。

 警察庁が、通学路や住宅街などの狭い「生活道路」の法定速度を一律時速30キロに引き下げる方針を明らかにした。

 歩行者や自転車を巻き込む事故の抑制が狙いだ。子どもや高齢者、障害者らの安全を最優先する視点は時流にかなっている。

 車の一般道での法定速度は現在、速度規制の標識や標示がある場所を除き、60キロに統一されている。しかし、歩行者らが日常的に利用する生活道路でも速度を緩めず走行する車が多く、交通事故が後を絶たない。

 ただ、幅員拡張や標識設置などの安全対策は費用を要し、十分に対応できていない。交通事故では衝突速度が30キロを超えると、歩行者の致死率が急激に高まることが知られており、法定速度の変更が検討されていた。

 警察庁は2026年9月からの実施に向け、道交法施行令の改正を急ぐという。

 生活道路に明確な定義はないが、センターラインや中央分離帯がない道幅5.5メートル未満の道路が対象となりそうだ。高速道路を除くと、一般道の約7割が該当し、狭い道路が交差する京都市内の中心部は大半が新たに規制される可能性がある。

 日本の道路政策は、長らく歩行者より「車をいかにスムーズに走らせるか」という効率性を重視してきた。その結果、交通事故死者に占める歩行者の割合が高い。亀岡市内で12年4月、登校中の小学生らの列に車が突っ込み、10人が死傷した惨事などを忘れてはなるまい。

 警察庁も手をこまねいてきたわけではない。11年以降、指定エリアの速度を30キロに規制する「ゾーン30」の導入を指示し、今年3月末時点で京都に93、滋賀に39など全国で4358カ所を設置済みだ。整備後、死亡・重傷事故の件数が3割近く減ったとのデータもある。

 とはいえ、対象範囲は限定的だった。一律30キロ制限によって広く規制の網をかけることができるのは間違いない。

 しかし、規制変更だけでは事故を完全に封じられない。道路をかまぼこ状に盛り上げる「ハンプ」などの併設で、より効果的に速度を抑える「ゾーン30プラス」の試みも栗東市内などで始まっている。狭い生活道路へは車両の進入を規制するなど、ハード、ソフト両面の対策が求められよう。

 幹線道路などは現行の60キロ規制が維持され、二つの法定速度が混在することになる。

 標識を設置せずに速度を規制することになり、課題はその道路に適用される最高速度をドライバーにいかに周知するかだ。

 郊外の農道や林道も一律に引き下げるのかも検討を要する。

 対象となる生活道路の定義を明確化し、誰もが正確に判断できる基準が必要となろう。

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