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「存在しないものを想像しながら」 元理系の文化財担当職員 故郷の歴史に懸ける思いは

京都新聞 / 2024年6月11日 15時18分

小学生や地域住民に山城跡を案内する山下さん(京丹波町橋爪)

 京都府京丹波町の文化財担当を務める山下泰さん(53)は、町内の山城跡を中心に文化財の調査にあたる。町の歴史を広く町民に知ってもらおうと、効果的な活用方法にも頭をひねる。

 「ほんの少しであっても、遺構が残っていることは奇跡。今は存在しないものを想像しながら現地を巡るのはとても楽しい」と声を弾ませる。

 同町出身。今でこそ「文化財担当」だが、須知高時代までは理系だった。それでも「日本の古代史や世界の古代文明にワクワクするタイプ。日本の戦国時代は特に好きだった」。

 歴史好きが高じて、卒業後は奈良大文学部の史学科へ進んだ。卒業論文は、旧瑞穂町の教育委員会で資料を探し、戦国時代に丹波地域で勢力を誇った武将・赤井直正をテーマに書いた。

 文化財との縁は続く。同町職員となって以降、教育委員会で子ども向けの体験学習や婦人会活動など社会教育に携わる傍ら、当時調査が進められていた中世の山城跡「鎌谷南城」へ、発見後の確認で登った。

 他課への異動を挟み、再び社会教育の現場に戻ると、2012年には京丹波町内初となる弥生時代中期の方形周溝墓の発見、府内最古のガラス玉や管玉の出土にも立ち会った。

 昨年夏から、同町の文化財調査活用アドバイザーの山下正己さんとともに町内の山城跡を巡る。今年の春には冊子「京丹波 山城の魅力(瑞穂編)」を完成させた。町民大学などを通じた住民への浸透を進めつつ、観光資源としての可能性も模索する。

 地元の子どもたちと学校近くの山城跡を訪れ、現地で解説することも。頭にはタオル、両手にトレッキングポールを携え、道なき道をずんずんと進む。高校、大学時代にワンダーフォーゲルで培った体力が今に生きる。

 同町は文化財を一括でまとめた冊子やデータベースがない。収蔵施設の整備もようやく始まったばかり。

 「今何もしなければ、何も残らない。ここで途切れさせるわけにはいかへん」
 

 町の歴史を次の時代へつなぐため、地道な調査と記録は続く。

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