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社説:欧州議会選 結束妨げる「自国第一」

京都新聞 / 2024年6月12日 16時5分

 欧州議会選挙で、欧州連合(EU)の政策に懐疑的な極右や右派の伸長が鮮明となった。

 インフレや移民問題に対する市民の不満をすくい取った形と言えよう。「自国第一」の主張が強まり、EUの結束にも影響する可能性がある。

 欧州議会はEUの予算や人事の承認を行う立法機関だ。5年ごとの選挙は、EU加盟27カ国の政党支持状況や、欧州全体の政治潮流を映し出す指標とも言われる。

 議会事務局発表の暫定結果で、極右・右派が計150議席以上を占め、全720議席の2割を超えて存在感を高めた。

 一方、フォンデアライエン欧州委員長を支える中道右派の欧州人民党(EPP)など親EU3会派は、16議席減の計401議席で、過半数は確保した。

 欧州では昨年11月のオランダ総選挙で極右政党が勝利した。欧州議会選もフランスやドイツ、イタリアなど主要国を含め各国でEUに懐疑的な勢力が拡大する、との予測が現実となった。

 背景には、急増する移民・難民への反発に加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰や環境規制への根強い不満がある。

 こうした中、自国民を最優先にすべきだとの訴えが支持を集めたようだ。

 かつては敬遠されていた過激さを薄め、庶民の味方を演出することで一定の支持を得る「ニューノーマル(新常態)」化が進んだとも指摘されている。

 EUは、気候変動対策として低炭素社会移行に向けた「欧州グリーンディール政策」など先駆的な環境政策を進めてきた。だが、極右・右派は消極姿勢が顕著だ。環境意識が高い市民もインフレ下での負担増には敏感で、投票結果にもつながったとみられる。

 ウクライナへの支援疲れも否めない。親EU勢力は軍事、財政面での支援継続を掲げるが、極右勢力の多くは関与を減らすべきとする。EUは結束の維持に力を注いでもらいたい。

 欧州議会選を受け、フランスのマクロン大統領が、国民議会(下院)の解散総選挙に踏み切った。極右の国民連合(RN)の得票率が与党連合の2倍以上の約31%に上り、政権にとって大きな打撃となったためだ。

 来月下旬にパリ五輪開幕を控える中、主導権を取り戻す「賭け」とも受け止められている。域内情勢が流動化しないか。

 日本としても注意深く見守る必要がある。

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