ALS治療薬候補「ボスチニブ」が病状の進行を一定抑制 iPS細胞使い、京都大学など治験
京都新聞 / 2024年6月12日 19時29分
京都大iPS細胞研究所などの研究グループは12日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬候補の治験で、投与しなかった場合と比べて進行を一定抑制する効果を確認できたと発表した。今後は投与に効果的なタイミングや、病態に応じた効果などを調べる治験を実施して検証を重ねる。
同研究所などはこれまで、ALS患者から作成したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って病態を再現し、さまざまな薬剤を試した結果、白血病治療薬「ボスチニブ」を有力な治療薬候補とした。2021年9月まで実施した第1段階の治験で安全性や一定の有効性を確認していた。
今回の今年3月までの第2段階の治験では、40~60代中心の男女26人の患者に対し、ボスチニブを約半年間、経口で1日1回投与した。この治験とは別に薬を飲んでいない患者データと照らし合わせて評価した結果、会話や歩行、呼吸など日常動作の悪化を抑える効果があることを確認した。
京大iPS細胞研究所の井上治久教授は「ボスチニブが症状の進行を止める可能性もあると考えており、できるだけ早く患者に届けられるようにしたい」としている。
ALSは運動神経細胞が死滅する進行性の神経変性疾患で、筋力低下や筋萎縮によって全身が動かなくなる。進行を止める治療薬はなく、iPS細胞を使って有効な薬を探す「iPS創薬」の手法で、慶応大などの研究チームも別の薬剤で治験を進めている。
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