1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

社説:機能性表示食品 健康被害の歯止めこそ

京都新聞 / 2024年6月14日 16時0分

 「紅こうじ」サプリメントを巡る健康被害の問題を受け、政府が機能性表示食品制度について対応方針をまとめた。

 健康被害の迅速な報告を義務付けた点などは一歩前進だ。とはいえ、「事業者任せ」の届け出制の是非に踏み込まないままでは、安全・安心の確保に程遠い。

 紅こうじ成分を含むサプリが原因とみられる被害は、5人が死亡、関連が疑われる入院は280人を超えた。新たな方針は、急きょ立ち上げた消費者庁の有識者検討会の報告を踏まえた。

 柱の一つとして、医師が診断した健康被害情報を事業者が把握した場合、因果関係が不明でも消費者庁などへ報告するよう法的に義務化する。紅こうじ被害では最初の症例把握から報告・公表まで2カ月以上もかかった。対応の遅れが問題視されており、速やかな報告義務は当然と言えよう。

 成分が濃縮されるサプリ形状の食品の製造には、品質・衛生管理に関する基準「GMP(適正製造規範)」取得を義務付ける。必要に応じ、消費者庁が立ち入り検査も実施する。医薬品にはGMP認証を課しており、効能をうたう以上、同様の生産管理の厳格化は遅きに失した感がある。

 違反があれば、営業禁止や停止などの措置も可能にする。国民の生命や健康に関わるだけに、行政の関与を強めるのは評価できる。

 ただ、届け出制という制度の根幹は維持する。

 事業者が独自に安全性や科学的根拠を示し、消費者庁に届ければ無審査で効能を表示できる。国の「お墨付き」との誤解を招き、健康被害を広げる恐れが残る。

 この制度は、安倍晋三政権下の2015年、成長戦略を旗印に創設された。規制緩和によって事業者の自己責任と市場のチェックに委ねるとの考え方だが、「世界一緩い制度」とも批判される。

 企業・団体献金を巡る国会論議で、機能性表示食品の上位5社が自民党の政治資金団体に多額の寄付をしたことが取り上げられたが、政策にゆがみが生じていないか。

 中小業者にも参入を促し、市場規模が膨らんだ一方、医薬品と誤認するような効能を宣伝するサプリも横行する。消費者の懸念を解消する歯止めが欠かせない。

 国が審査する許可制の特定保健用食品(トクホ)なども含め、市場に数多く出回る健康食品全般の安全性をいかに確保するか。消費者が安心して摂取できるよう制度の抜本的な改善を求めたい。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください