社説:東京都知事選 全国の自治、先導する論戦を
京都新聞 / 2024年6月17日 16時0分
20日告示(7月7日投開票)の東京都知事選に、現職の小池百合子氏が3選を目指し立候補を表明した。野党側から蓮舫参院議員が無所属で立つ。両氏を軸とした選挙になる見通しだ。
今夏最大の政治決戦は、裏金事件で低支持率にあえぐ岸田文雄首相の国政運営にも影響しよう。
1400万人が暮らす過密首都に人口集中が進み、吸い寄せられる地方の衰退が止まらない。立候補者には、都民生活にとどまらず、日本の行く末を見据えた論戦を望みたい。
独自候補の擁立を見送った自民党は、公明党とともに小池氏を支援する方針だ。立憲民主や共産、社民各党は立憲を離党した蓮舫氏を推す。日本維新の会は候補擁立を断念した。
逆風下の自民に、どういう距離感で小池氏が接するのか、まだはっきりしない。小池氏が特別顧問を努める地域政党「都民ファーストの会」はもともと「反自民」を掲げて都政で勢力を伸ばしたが、最近は協力関係も目立つ。明確な説明が要る。
一方、蓮舫氏は自民批判を前面に与野党対決を強調する。春の衆院補選や静岡県知事選で自民が推す候補の連敗が続く状況を追い風にしたいのだろう。
小池氏も蓮舫氏も国政の場で党首経験があり、それぞれ選挙で敗北して辞任に追い込まれる苦さを味わった。国政での対決構図だけに終始せず、首都の将来像と地方自治の拡充に向け、具体策を競ってほしい。
政治分野の男女格差が先進国で最も大きいと指摘される中、自治のリーダーを目指す女性同士の論戦が、政治変革の力になることも期待したい。
東京都は23区を中心に他都市から人口が流入する半面、長年にわたり低出生率が続き、吸い込むだけの「ブラックホール型自治体」と呼ばれる。京都市も同様である。
小池氏は子どもへの現金給付などを実施しているが、効果を疑問視する声も少なくない。国予算への依存が相対的に低い都は、独自施策を講じやすいが、派手さや人気取りに流れていないか。ばらまきでなく、全国の自治を先駆する取り込みこそ求められよう。
昨年で関東大震災から100年。一極集中でタワーマンションが林立する中、首都直下地震対策など都市防災の困難さは増すばかりだ。都自身が「抱え込み」から集中是正に乗り出すべきではないか。リモート勤務の広がりなど「ポスト・コロナ社会」の働き方に沿い、都民の暮らしやすさにもつながろう。
小池都政2期目の目玉だった東京五輪・パラリンピックは、招致した際の「コンパクト」が置き去りになり、巨額の公費が追加投入された。閉幕後は贈収賄や談合が発覚した。
8年の都政をどう評価し、発展させるか、転換するか。都民の判断が注目される。
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