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社説:ウクライナ支援 G7の結束、いかに広げるか

京都新聞 / 2024年6月18日 16時0分

 先進7カ国(G7)首脳が演出した結束を、どこまで世界の現実を動かす力につなげていけるか。

 イタリアでのG7首脳会議(サミット)は、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの「揺るぎない支援」をはじめとする首脳宣言を採択した。

 焦点だった支援強化策では、西側諸国が制裁で凍結したロシア資産を活用し、ウクライナに約500億ドル(約7兆8千億円)を提供することを決めた。

 資産を全て没収して支援に回す案は国際法に抵触しかねず、ドイツやフランスは慎重だったが、運用収益を転用する方法で合意した。

 ウクライナへの「支援疲れ」も見られる中、長期的な援助に向けた枠組みといえよう。

 ロシア制裁では、中国に対し軍民両面で利用可能な物資のロシアへの移転停止を要求した。また、ロシアとの取引を続ける中国などの金融機関に制裁を科すことも明記した。

 しかし、そうしたG7共同の圧力だけでは、局面の打開は相当厳しいことも事実だ。

 G7サミット直後にスイスで開かれた「世界平和サミット」では、ウクライナが提唱してロシア軍撤退を求めた共同声明にインドなどは加わらず、中国は会議自体を欠席。多数の新興国の首脳は参加しなかった。

 ウクライナ、ロシア、中国がそれぞれ示す「和平案」はかけ離れ、着地点は影も見えない。

 国際社会でのG7の存在感は1975年の創設時より経済規模で7割から4割に低下している。ブラジルやインドネシアなどグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との連携なしに、国際紛争や気候変動などの解決は困難になっている。

 G7サミットでは、パレスチナ自治区ガザ情勢を巡り、米国が示した停戦案を全面支持することで一致した。

 だが、イスラエルによる攻撃が多数の市民の犠牲を生む中、イスラエル擁護を続ける米国には「二重基準」との批判が高まっている。

 先行きの不透明感を高めているのが、G7首脳の多くが直面する指導力の陰りである。

 バイデン米大統領は11月の大統領選で、ウクライナ支援に消極的なトランプ前大統領との接戦が伝えられる。

 英国も与党が7月の総選挙で苦戦を強いられそうだ。独仏も、先の欧州議会選で右派勢力が伸長。岸田文雄首相は支持率低迷が深刻だ。

 サミットで示した結束を形にする外交こそが問われよう。

 昨年の広島サミット議長国としてまとめた「核軍縮に関するビジョン」について、言及が少なかったのは残念だ。

 試練の中でこそ、国際平和維持の根本に立ち戻り、「核なき世界」への構想を議論し続けてほしい。

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