社説:日銀の国債減額 金融の正常化を着実に
京都新聞 / 2024年6月19日 16時0分
金融政策の正常化を着実に進めてもらいたい。
日銀が金融政策決定会合で、金融緩和の手段として10年以上も実施してきた国債の大量購入を減らすことを決めた。
3月のマイナス金利政策解除に続き、保有国債を段階的に縮小する「量的引き締め」へと転換することになる。
行き過ぎた円安や財政規律のゆがみなど副作用が目立つ「異次元の金融緩和」と決別する上で、避けて通れない決定といえよう。一方で、経済と暮らしへの影響に配慮した慎重なかじ取りが欠かせない。
日銀は2013年4月、長期金利を低く抑え、市場にマネーを流すため、国債の大量購入を開始。その結果、保有額は600兆円近くに達し、大規模緩和前と比べ6倍強に膨らんだ。
政府発行残高に占める比率は50%を超え、国際的にも異常な状況というほかない。国債市場の機能にもゆがみをもたらしている。
今回の決定は、過度な円安に歯止めをかける意図もあろう。
3月に17年ぶりの利上げを行った後も、日銀は国債購入を続行。植田和男総裁の円安容認と受け取られる発言もあり、4月下旬には一時1ドル160円台にまで円安が進んだ。政府が大規模な円買い介入を余儀なくされる中、日銀も対応を迫られていた。
しかし、今回は購入減額の方針を示すにとどまり、「市場への配慮」を理由に、規模など詳細は次回7月会合に決めるという。
急な引き締めによる景気悪化などを避けるためとみられる。市場は小幅な修正と判断し、円安傾向を変えるには至ってない。
植田氏は会合後の会見で、市場の反応や円安の動向を注視すると説明しつつ、減額は「相応の規模になる」「情勢次第で追加利上げも当然ある」と含みをもたせた。
長期金利が上昇すれば、住宅ローンの金利も上がり、企業の借り入れ負担も大きくなる。国債の利払い費が増え、巨額の債務を抱える財政を圧迫する可能性が強まる。
日本経済が先行き不透明な状況で、日銀が長年の大幅緩和を正すことは容易でない。「物価の番人」として、政策変更による国民生活や経済の影響への目配りと、丁寧な説明が欠かせない。
「金利のある世界」に戻る上では、政府が安易な国債発行を厳に慎む姿勢も重要だ。従来の借金頼みの体質を改め、財政健全化の道筋を早急に示すべきである。
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