社説:不信任案の否決 幕引きなど許されない
京都新聞 / 2024年6月21日 16時5分
立憲民主党が提出した岸田文雄内閣への不信任案が、自民、公明両党の反対で否決された。
自民派閥による裏金事件の反省に立った政治改革こそ、通常国会の最大の焦点であった。
だが、再発防止や透明性確保にも「抜け穴だらけ」と批判する野党を退け、改正政治資金規正法を成立させた政権の信任が、与党議席の「数の力」で押し通された形だ。
未曽有の不正発覚から半年。内閣支持率は低落が続き、自民内も含め退陣や衆院解散・総選挙を求める声が上がっている。これで幕引きなどありえない。
幅広い合意形成に背を向け、事件の当事者らがごり押しした改正法は「不正の温床」をことごとく残し、金権政治との決別を求める国民の願いとかけ離れている。
岸田首相の危機意識の欠如と抜本改革への後ろ向きさは、改正法成立後に開かれた党首討論で改めて浮き彫りになった。
立民の泉健太代表が「改正法は落第点。自民は裏のカネで選挙や政治活動をしようとしている」と追及したのに対し、岸田氏は「(企業・団体献金、政策活動費など)全て禁止というのは気持ちいいかもしれないが、現実を見ない案ではいけない」と反論した。
聞き捨てならないのは「政治にはコストがかかる」と強調した居直りだ。本人も言う「政治資金は民主主義を支える重要な要素」だからこそ、ゆがめないよう「国民の不断の監視下に置く」と定めたのが規正法の本旨である。そのために公費による政党交付金を設けたはずだ。
国民の目から隠すことを「政治活動の自由」とすり替え、自らに都合のよいカネ集めを献金側の権利や、政治を志す若者のためと言うのは詭弁(きべん)というほかない。
ただ、野党4党首との質疑応答を合わせ、わずか45分間の「討論」はあまりに短い。
前回の規正法改正に連なる「平成の政治改革」の一環で2000年に導入された党首討論だが、形骸化が指摘されて久しい。実に3年ぶりの開催で、岸田、泉両氏はじめ大半が初めて相対した。
短時間のやり取りで法案採択の区切りにしたい与党と、幕引きを避けたい野党との溝が実現を阻んできた。
ただ、野党側が選択的夫婦別姓実現へ政治決断を迫ったように、党首同士で政策、信念をたたかわせる意義は小さくない。十分な時間確保や定例実施、方法見直しでもっと有為に機能させるべきだ。
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