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社説:農林中金の赤字 1次産業支援の原点大切に

京都新聞 / 2024年6月22日 16時0分

 農林中央金庫(農林中金)が2025年3月期の連結純損益で、1兆5千億円規模の赤字を計上する見通しになった。

 金利が低い時期に購入した米国や欧州などの外国債券を中心に時価が下がり、含み損が2兆円余りに膨らんだ。この処理のため、外国債券を中心に利回りの低い債券約10兆円分を売却して損失を確定する。

 農林中金は、株式よりリスクが少ないとされる外債運用に注力してきた。債券は金利が上がれば価格は下落する。米国の急速な利上げへの対応が遅れたのは否めない。

 支えるべき農林漁業者に影響が及ばないよう、問題点を明らかにし、安定した運用体制に見直さねばならない。

 赤字転落はリーマンショックの影響を受け、09年3月期に5721億円の赤字となって以来となる。

 財務の健全性を示す自己資本比率には反映済みとするが、経営基盤の強化に向け1兆2千億円規模の資本増強に取り組む。26年3月期の連結純損益は黒字転換を見込む。

 全国のJAグループや漁協、森林組合などが出資している農林中金は、JAや各地の信用農業協同組合連合会(信連)を通じて集めた預金を運用し、農林水産業関連の法人や団体などに融資している。

 24年3月時点で預金残高は64兆円に上り、資産運用残高は同時期で56兆円と、国内最大規模だ。運用で増やしたお金や利息、配当などはJAグループの経営も下支えする役割を担っている。

 JAなどは生産物の販売といった農業収益が減少傾向にあり、金融や共済の事業で補っている面が大きい。

 そうした厳しい状況で捻出されるお金を預かる責任の重さを、改めて自覚すべきだろう。

 今回、大規模な増資に応じるのも各地のJAだ。その最終的な支え手は、1次産業の従事者である。

 農林中金は今後、社債や株をはじめとする収益性の高い資産への入れ替え、分散を進めるとしている。

 リスク管理を徹底しつつ、市場の動向に柔軟に対応する体制を築く必要がある。

 その上で、改めて重要なのは、第1次産業振興を見据えた融資の開拓ではないか。

 農林中央金庫法には設立目的として「農林水産業の発展に寄与し、国民経済の発展に資する」と明記されている。今回の巨額赤字を、組織の原点に立ち戻る契機とすべきだ。

 JAや漁協などの事業強化への支援に加え、食や農業関連の法人への融資なども広げる必要があろう。

 スマート農業など、1次産業の新たな分野の担い手や、アグリビジネス分野の起業家も支えていきたい。

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