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社説:通常国会の閉会 国民の願いに背向けた首相

京都新聞 / 2024年6月23日 16時0分

 きょう通常国会が閉会する。岸田文雄首相は会見で「重要な政策が大きく進んだ」と語ったが、空疎な響きは否めない。

 自民党の裏金事件で政権が右往左往する中、生活に大きな影響を及ぼす予算や重要法案の審議が尽くされず、最後は「数の力」で成立させた。

 焦点の裏金対応も、政治資金の出入りをガラス張りにする抜本改革から逃げ、新たな抜け穴を作る一時しのぎにとどまった。

 国会を迷走させて機能不全にし、政治や暮らしの停滞を招いた岸田氏と自民党の責任はあまりに重い。国民の不信感は極みに達していると知るべきだ。

 1月に発生した能登半島地震は水道など生活インフラ復旧の足取りが遅く、避難生活による疲労やストレスが原因の「災害関連死」は50人を超えた。行政の目配りが届いていないのも大きな要因との指摘が上がる。

 物価の上昇に対し、実質賃金が下がり続ける中、経済再生を掲げた2024年度予算案は、112兆円と過去2番目の規模に膨らんだ。だが、防衛費「倍増」や「異次元」少子化対策の巨額財源は曖昧なまま、3割を国債で賄う「借金依存」で持続性が危ぶまれる。

 児童手当の所得制限撤廃などに向け、医療保険への「支援金」の上乗せを「負担増ではない」と強弁し続けた岸田氏の姿勢は、子育て世代を逆に不安にするような不誠実さだった。

 今月から始まった定額減税は、首相がもくろんでいた衆院の解散・総選挙への「売り」だったのだろうが、効果は疑わしい。国民の人気取りと自民内への配慮を優先する岸田氏の身勝手さが、裏金事件の対応失敗につながり、支持率低落に拍車をかける悪循環を招いた。

 解散見送りに追い込まれたのは当然というほかない。

 改正地方自治法と経済安保情報保護法の成立は、今後に禍根を残した。

 非常時に国が自治体へ指示する権限を拡大する自治法改正は、政府自身が「現時点で想定できるものはない」と必要性を示せなかった。沖縄での強引な米軍基地建設などをみると、地方統制を強める意図が透ける。

 「機密情報」を扱う民間人や家族の身辺調査をする経済安保法は、機密の範囲や調査内容が不透明で、公権力による国民監視が広がる恐れが拭えない。

 離婚後に両親が子育てに関わる「共同親権」を選べるようにする民法改正を含め、国民の賛否が分かれる法案が次々と短時間審議で通過したのは、国会の形骸化を象徴していよう。

 「多弱」とはいえ、野党の戦略不足も目立った。特に日本維新の会は微修正で自治法や政治資金規正法の改正に賛成した。「首相にだまされた」と規正法は参院で反対したが、軽率な党首合意で与党にすり寄った馬場伸幸代表の責任は免れない。

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