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社説:授業に地域の力 教員と連携し豊かな学びに

京都新聞 / 2024年6月24日 16時0分

 中学校のクラブ活動の地域移行と同様に、普段の授業でも地域の人材や施設を生かす動きが教育現場で進んでいる。

 カリキュラムが多様化し、教員も多忙化する中、各学校にはこれまで以上に指導の工夫が必要になっている。地域との連携を、教育の質の向上につなげられるかが問われよう。

 京田辺市は本年度から、全9小学校の水泳授業を民間のスイミングスクールなどに委託した。直接のきっかけは、各学校のプールの老朽化だ。多額の費用をかけて更新するより割安だったのに加え、民間委託の利点は費用面だけにとどまらない。

 プロのインストラクターの指導を受けられ、水質や水温の管理が徹底された室内プールで泳げるとあって児童の評判もいいようだ。教員にとっても、プール掃除や水質管理などの業務が省かれるため、負担軽減になるという。

 こうした専門的な知識や技能を持った人材の教育現場での活用は、「総合的な学習」や「音楽」、「情報」などの授業でも試みられている。

 ただ、公的な教育活動として実施する以上、外部に内容や責任を丸投げするのではいけない。教員が授業の組み立てを主導し、子どもたちが主体的に学べるような配慮は欠かせない。

 昨秋に京都市立芸術大の新キャンパスが誕生した下京区では、区内の4小学校の教員と市立芸大の学生やOBが協力して、音楽の授業をつくる取り組みが行われている。

 教員と学生が互いの立場から意見を出し合って授業を行うのが特徴で、従来型の出前授業とは大きく異なる。生の演奏に触れることができる子どもと、多くが教職課程を履修している学生の双方に利点があるようだ。新たな授業のモデルとして広がりを期待したい。

 一方で、地域資源を活用する授業の実施には課題もある。

 人口の少ない地方では、学校側が望む人材や施設が見つかりにくい。専門的な技能を持った教員OBや学生らと、学校のニーズをマッチングさせる仕組みづくり、公共施設やICT(情報通信技術)の積極的な活用が考えられよう。

 継続的に授業を展開するためには、施設の使用料や、指導者への謝礼にかかる費用の確保も欠かせない。

 2020年度から順次実施されてきた現在の学習指導要領は、地域住民や専門家との「協働的な学び」の必要性を掲げている。国には居住地による格差是正を含め、財政や人材の確保への支援を求めたい。

 学外との多様な交流がある学びは、子どもたちが地元の実情や課題に目を向けるきっかけにもなろう。地域社会の協力と担い手を育む意味でも、従来の枠組みにとらわれない授業の在り方を柔軟に模索してほしい。

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