世界の難民の現状、FMラジオで伝えて20年 元・吉本新喜劇団員の夢は「番組終えることが理想」
京都新聞 / 2024年6月20日 6時30分
京都のコミュニティーFM局で難民情報を発信する「難民ナウ!」が放送開始から20年を迎えた。「難民問題を天気予報のように」をコンセプトに、戦争などで住み慣れた場を追われた人たちの実情を市民目線で伝えてきた。国内外に逃れた難民・避難民が世界で1億人を超えた今、番組を手がける男性は「暴力が過激化する中、少し立ち止まり、難民問題を冷静に話し合う機会を地域でつくりたい」と熱く語る。
難民ナウ!は、吉本新喜劇の元劇団員宗田(そうだ)勝也さん(57)=滋賀県高島市=が2004年2月に始めた。きっかけはプロ野球・阪神がリーグ優勝した03年。ファンが道頓堀に飛び込む浮かれた街の姿と、世界で多くの子どもが飢えに苦しむ現実との差に疑問を抱き、平和学のセミナーに参加した。そこで難民問題と出合い、空模様を気にするように、自然に難民について考える機会を増やしたい、との思いがラジオ番組の制作につながった。
以来、「京都三条ラジオカフェ」(京都市中京区)で毎週土曜午後7時から6分間、マイクに向かう。番組でインタビューした人は、シリアやウガンダの難民をはじめ、支援団体や研究者、アーティストら600人超。難民の数を京都の人口と比較するなど、国連難民高等弁務官事務所が発信する情報をリスナーに分かりやすく届けることを心がけた。また、番組と連動した講演会や催しを開くなど地域に根ざした活動も展開してきた。
一方、番組を通じてミャンマーの難民とつながった14年ごろから活動の形は変わりつつある。現在は、軍政下の同国の情勢を考えるオンライン動画の配信に力を注ぐ。日本とミャンマーの政治家の対談や、攻撃を逃れてジャングルで授業を受けざるを得ない子どもたちなど、暮らしが破壊されている現実を伝える。能登半島地震の被災地で炊き出しの支援も続けている。
多忙でラジオは再放送で対応することが増えていたが、20年の節目を機に番組の更新を順次進める。龍谷大との地域連携協定に基づき、今後は日本にいる難民の学びや働く場の開拓も進めていくという。
自身の活動が続いていることは、難民問題が解決していないことの裏返し―。そんなジレンマを抱えながら宗田さんは、世界中の子どもたちが自分の家で眠れる当たり前の日常が訪れることを切望する。「問題が解決し、難民ナウ!を終えることが理想です」
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