1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

学校の「クラス替え」どうやって決める? 学力、人間関係…先生に重視するポイント聞いてみた

京都新聞 / 2024年5月13日 6時0分

クラス替えの経験について語り合う府教育委員会の菊井さん(左)と平山さん=京都市上京区

 滋賀県守山市の中学校で先月、新学期の開始早々にクラス替えをやり直す異例の事態が発生した。クラス替えは、新たな気持ちで新学年に臨む児童生徒にとって最大の関心事の一つ。クラス替えはどうやって決めているのか。ともに京都府教育委員会総括指導主事で、小学校教員のキャリアの長い平山孝次さんと、中学教員を長く務めた菊井雅志さんに聞いた。

 -クラス替えをする意義は。

 平山 組織の活性化だと思う。同じ時間を長く過ごすとクラスの雰囲気がマンネリ化する。人間関係が固定化し、互いに刺激し合うという緊張感が薄れる。教員と子どもの関係も同じことが言える。定期的にクラス替えをすることで新たな集団ができる。おとなしい子がクラスを引っ張る存在になることもある。

 菊井 中学校も基本的に同じだ。ただ、高校進学のための環境づくりを考慮しないといけない、という点が小学校と異なる。具体的には、「人間関係が深まるのはいいが、仲良くなりすぎて騒がしいよね」ということもあり得る。授業に集中できるように、生徒たちが落ち着ける分け方をする必要がある。

 平山 ゲームのボタンではないが、クラス替えにはリセット機能がある。

 菊井 中学では1クラスに40人近くが在籍するが、「このクラス、最高だった」という生徒がいる半面、雰囲気について行けず苦しい思いをする生徒もやっぱりいる。クラスをシャッフルして、心機一転で次の学年に臨めるようにする意義は大きい。

 -クラス替えに関わる人や決まっていく過程は。

 平山 小中学校ともに基本的に同じだが、まず元のクラスの担任が考える。1学年に2学級あるとすれば、担任2人に加配教員が加わる。3月中下旬の卒業式後に話し合いを始めて、第1案をまとめる。その上で、教頭や教務主任、養護教諭がヒアリング。問題なければ、校長が最終的に承認し、3月末には決まる。

 -クラス替えで重視する点は。

 平山 まずは人間関係。子ども同士の相性、教員と子どもの相性をみる。いじめや不登校についてもこの観点に入っている。

 菊井 学力や運動能力がクラスによってばらつかないよう考慮するが、人間関係を中心に分けていくとそろっていることが多い。

 平山 小学校は下校時、一緒に帰宅できるように同じ地域の子どもを複数入れる。また、身体面の配慮から身体接触が必要で、特に女児の場合は女性教員を充てるとかも考える。

 菊井 クラスを引っ張ってくれるリーダーも大切。中学校は合唱コンクールがあるので、ピアノが弾ける子を分けるというのも要素の一つだ。同じクラブ活動に所属する生徒を集めないとかも。

 平山 リーダーばかり集めると、相性が悪くつぶし合いになる恐れがある。子どもたちの良さを発揮できるようにするのも我々の腕の見せどころだ。

 -保護者の意見をクラス替えに反映することはあるのか。

 菊井 保護者の訴えに基づいた調査で、子どもが明らかに被害を受けたり、不利な状況になったりすることが事実と判明すれば、考慮することはある。

 平山 私たち教員が把握できていない人間関係を知る上で、保護者の情報は貴重だ。反映するとは約束できないが、とても参考になる。

 -クラス替えの議論にかかる時間は。

 平山 担任レベルで、1回につき2、3時間の議論が計5回ぐらい。話し出したら止まらない。感覚的なものだが、これだったらうまくいきそうだ、とイメージできたら話し合いは終わる。

◇京都府と滋賀県の自治体、毎年実施が大半

 かつて小学校で一般的だった「2年に1回」のクラス替えは、ほぼ消えつつある。京滋の公立小で「2年に1回」は京都府内の4市町にとどまり、滋賀県では全ての自治体が「毎年実施」派だった。

 京都の各市町村への取材で小学校のクラス替えを「毎年実施」すると回答したのは、昨年度まで2年に1回だった宮津市を含めた18市町で、「2年に1回」は舞鶴市、京丹後市、宇治田原町、与謝野町だった。

 中学校は、京丹後市を除いて毎年実施だった。

 京丹後市は、中学2年から3年への進級時にはクラス替えを実施しない。理由について同市教委は「3年生の4月に修学旅行に行くため、2年後半から事前学習をしているため」としている。伊根町、笠置町、和束町、南山城村は全小中学校が単級で、クラス替えは不可能だった。

 滋賀では、小中学校ともに全19市町が「毎年実施」している。

 「毎年実施」派の主な理由は、「学校は社会性を身に付ける場だ。クラス替えによって、より多くの子どもと接し、関われるようになる」(京田辺市)や、「人間関係を固定化させたくない。クラス替えを契機に子どもたちの意欲の向上を図ることができる」(宇治市)、「人間関係で苦しくなった子が長い間、我慢しなくてもいい」(栗東市)など。

 「2年に1回」派では、「人間関係づくりは時間がかかる」(舞鶴市)、「2年間同じ顔ぶれなので、(子どもや教員が)お互いに理解して高め合っていける」(与謝野町)などの意見があった。

 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください