社説:ふるさと納税 自治ゆがめる官製通販
京都新聞 / 2024年6月27日 16時5分
毎年の弥縫(びほう)策も限界だろう。いびつな自治体競争から抜け出すべきだ。
総務省が、ふるさと納税制度のルールを見直すと発表した。特典ポイントを付与する仲介サイトを通じて、自治体が寄付を募ることを禁止するという。
サイトの運営業者に対して自治体が支払う手数料の一部が、ポイントの原資になっており、規制強化で手数料を抑え、自治体の収入を増やす狙いとしている。
「納税」をうたう公的な制度でありながら、消費者を特典で囲い込む仲介業者の論理が、まかり通ってよいはずがない。遅きに失した是正といえよう。
2008年度に始まったふるさと納税は、自治体に寄付をすると一律2千円を除いた額が居住地の住民税などから控除される。寄付総額は年々増加し、23年度は1兆円を超えると見込まれている。
当初から高額な返礼品による競争の過熱が問題となった。国は返礼品を地場産品に限り、寄付額に占める割合を30%以下に決めるなどルールを改めてきた。
だが、毎年場当たり的な対応にとどまり、集まった寄付金の約半分が返礼品の調達や配送、宣伝などの経費に消える構造は、いっこうに変わらない。なぜ施策に活用できる割合が増えないのか。仲介業者は必要なのか。経費の詳細を開示して点検すべきだ。
著名な特産品のある自治体に寄付が偏り、高額所得者ほど「節税」となる現状では、格差を広げるばかりだ。出身地やゆかりの地域を支援する本来の趣旨からも大きくかけ離れている。
制度利用が広がる一方、控除で住民税が「流出」した分の75%を地方交付税で補てんする国の支出も増え続けている。
寄付収入が流出分を上回る「黒字」の自治体も対象で、22年度に全国7位の95億円の寄付を集めた京都市も補てんを受けた。
財政力の均衡を図る交付税制度は、不足分を国債(借金)で賄って運営している。ふるさと納税でゆがんだ税制を、国の補てんでさらにねじれさせていると言わざるを得ない。地方分権や税の公平、中立を損なう弊害は大きい。
先細る税収のパイを自治体間で奪い合う「官製通販」を続ける先に、人口減社会を乗り切る自治の展望はひらけない。
返礼品ではなく寄付の使い道となる施策を競い、共感する人が支える仕組みへと、抜本的に改革する時である。
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