社説:電気ガス補助金 弊害招く首相のあがき
京都新聞 / 2024年6月28日 16時5分
あまりに露骨な政権浮揚策というほかない。
岸田文雄首相は先月終了したばかりの電気・ガス料金への補助金を、8月から復活させると表明した。国会閉会を受けた会見で唐突に述べたが、自民党からも公然と「行き当たりばったりだ」との批判が噴出している。
派閥の裏金事件などで2割に沈む支持率を挽回し、秋の自民総裁選での再選を目指す思惑だろう。ガソリンへの補助も年末まで続けるとした。
今月から始まった定額減税も含め、巨額の公費を私物化するような人気取り工作は、いいかげんにしてもらいたい。国民は岸田氏の統治能力を疑っており、下心は見抜かれていると自覚すべきだ。
電気・ガス代補助は昨年1月、前年から続くロシアのウクライナ侵略を受け、国際的にエネルギー価格が高騰したため緊急措置として始まった。
事業者への助成で平均して電気代は2割、ガス代は1割ほど抑制した。段階的に縮小し、液化天然ガスや石炭の値段が一時より下がったことを踏まえ、先月の使用分で補助を終えた。
再開は8月から10月までで、終了前の水準(標準世帯で電気・ガス代計月1850円程度)減額するという。岸田氏は「酷暑を乗り切るための支援」と説明したが、これまでの効果の検証もなく、無理を通すための後付けとしか思えない。専門家は「冬場も暖房で電気・ガス代はかさむ。すんなり終了できるのか」といぶかる。
財源は物価高対策の予備費などを充てるが、開始以来の補助総額は4兆円規模に膨らむという。
また一昨年1月からのガソリン価格抑制のための補助金は延長を重ね、総額は6兆円を超える。
国の債務は膨らみ続けており、ツケは将来の国民に回る。
その身勝手さと迷走ぶりは、政権末期のあえぎにも映る。
菅義偉前首相はインターネット番組などで岸田派の元会計責任者が起訴されたのに、首相が責任を取っていないと言及。総裁選を「党刷新の考え方を理解してもらえる最高の機会」とし、事実上の退陣要求を突きつけている。
先週末の世論調査でも支持率は8回連続となる2割台で、岸田氏続投を望む人は1割にとどまる。
物価高の根底にある円安の是正や低所得層に絞った対策など、本来は国会開会中に議論すべきだった。政権にしがみつかんばかりに姑息(こそく)なばらまきを繰り返すのは、もはや弊害でしかない。
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