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社説:「紅こうじ」被害 後手の対応、許されぬ

京都新聞 / 2024年7月3日 16時0分

 健康に関わる企業でありながら、責任感を欠き、問題を矮小(わいしょう)化する体質が露呈したといえよう。

 小林製薬の紅こうじサプリメントの摂取と関連が疑われる死亡事例が新たに76人に上ることが分かった。詳細は調査中だが、食品による被害としては異例の規模だ。

 3月下旬に健康被害が発覚して以降、同社は「死亡事例は5人」としてきた。それが先月、サプリ摂取後の死亡を疑う相談が170人分寄せられ、そのうち、未摂取が確認された人などを除き、76人について関連がある疑いで調査していると明らかにした。

 「被害調査の対象を腎関連疾患と診断されたケース以外にも広げたため」とするが、説明する記者会見を開いていない。命に関わる問題であるのに、責任意識の低さにあぜんとする。

 小林製薬は1月に健康被害を把握しながら約2カ月間、公表も自主回収もしなかった。またも対応が後手に回ったのは、信頼回復への意識も企業統治も改善が進んでいない表れとみざるを得ない。

 武見敬三厚生労働相は、報告の遅れについて「極めて遺憾」と不快感を示した。だが、厚労省側にも、被害状況の把握に関して認識の甘さがあったのではないか。

 同省は、死者数や受診者数などの自発的な報告を求めてきたというが、今回の結果を見る限り疑問が残る。被害を食い止めるため、今後は会社任せにせず、国が積極的に関与する姿勢が求められる。

 被害者への対応も、早急に改めるべきだ。サプリ健康被害の発覚から3カ月が経過した先月28日、同社はようやく「補償対応本部」の設置を発表した。だが、補償の具体的な日程が示されないなど、場当たり的な姿勢が目に付く。

 健康被害の原因を巡っては、製品原料から3種類の化合物が検出され、うち青カビ由来の「プベルル酸」が腎障害を引き起こすことが確認された。だが残る2物質の腎毒性は今も解析が続いている。

 日本腎臓学会は、同社の紅こうじサプリ摂取後に腎障害が出た患者206人の8割超で腎機能が改善していないとの分析結果を発表した。腎臓へのダメージの大きさと回復の難しさがうかがえる。小林製薬は、より丁寧な説明と補償に臨むべきだ。

 機能性表示食品制度の見直しも急ぎたい。政府は、医師の診断がある健康被害の報告を事業者に義務付け、消費者庁が9月から実施する。消費者の不安を取り除く改善策が欠かせない。

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