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社説:印のモディ政権 後退招いた強権、脱却を

京都新聞 / 2024年7月4日 16時0分

 インドのモディ首相が3期目をスタートさせた。初代首相のネール以来、2人目の3期連続で、60年ぶりという。

 5年に1度となる総選挙では、モディ氏の率いるインド人民党(BJP)の圧勝が予想されていたが、2014年の就任以来、初めて単独過半数を割り込んで勢力が後退した。与党連合でかろうじて多数を維持した形だ。

 求心力の低下が懸念され、政権運営に不安定感が漂う。

 国連推計によれば、インドは昨年、人口で中国を抜いて世界1位に立った。巨大市場として世界経済や外交面でも存在感が高まっており、新たな「大国」としてのモディ政権の行動が問われよう。

 モディ氏は製造業振興策で外国企業を呼び込み、インフラ整備に力を入れてきた。GDP(国内総生産)は21年に世界5位となり、近く日本やドイツを抜いて世界第3位になる見通しである。

 一方で、経済格差の広がりは深刻化している。選挙の鍵を握るとされた北部の州では、野党が躍進した。貧困層が多い地域で、人々の不満が投票行動につながったと見られる。

 特に若者の就職難や物価高は深刻だ。民間シンクタンクによると、22年度の15~24歳の失業率は45%を超えた。雇用を創出するための新たな施策や環境整備が課題だろう。

 人口の8割を占めるヒンズー教徒票の取り込みを狙い、「ヒンズー至上主義」の政策を打ち出してきたことにも反発が強い。イスラム教徒を迫害する言動を重ねて宗教間対立をあおり、少数派との分断を深めている。

 自身に批判的な報道機関への規制も強め、総選挙前に野党指導者が逮捕された際には、「弾圧だ」との批判を浴びた。

 独立以来掲げてきた宗教間の平等の理念や、政教分離の原則からはほど遠い。強権的な政治手法は人心を遠ざけるばかりだ。

 インドは中国をにらんだ日米豪との協力枠組み「クアッド」に参加する一方、ウクライナ侵攻で経済制裁を受けるロシアとの貿易を増やしてきた。米欧に対抗する中ロと組んだ連合「BRICS」の加盟国拡大にも力を入れ、全方位外交を展開する。

 新興・途上国「グローバルサウス」の盟主として発言力が高まる中、「世界最大の民主主義国」を掲げるのであれば、国際紛争の解決や人権尊重で責任ある対応を求めたい。

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