社説:土石流対策 「人災」繰り返さぬよう
京都新聞 / 2024年7月4日 16時5分
危険な盛り土によって引き起こされた「人災」を教訓に、災害への備えを改めて確認したい。
28人が犠牲になった静岡県熱海市の大規模土石流災害は、発生から3年がたった。被災地では昨年9月にようやく警戒区域が解除されたが、帰還した住民は2割ほどにとどまるという。
土石流は、違法に造成された盛り土が起点となり、大雨の影響で崩壊して流れ下った。市が業者の書類に不備があったにもかかわらず受理し、県との連携が不十分で是正措置もとらなかった結果、届け出の3倍を超える高さに土が積み上げられたとされる。
行政に対する住民の不信感は今も根強く、住宅再建など復旧事業を巡っても市の説明が不十分だとして反発が広がっている。被災者の目線に立った対話が不可欠だ。
熱海の土石流をきっかけに、「盛り土規制法」が昨年5月に施行された。
盛り土が崩落した場合、住宅に被害が出る恐れがある場所を都道府県などが「規制区域」に指定する。許可がなければ造成できず、違反すれば最高3億円の罰金を科すとしている。
京都市は先月、市内全域を許可が必要な区域とした。従来の条例より小規模の盛り土工事も規制対象となる。京都府も同法施行の経過措置の2年間で指定を進める方針。滋賀県と大津市は来年4月から全域を指定するという。
盛り土に使われる建設残土は、規制の緩い地域に集まる実態がある。京滋でも過去に無許可で運び込まれた土砂が、大雨で崩落した例が繰り返されてきた。
厳正な運用に加え、府県と市町村の連携による監視で実効性を高めなければならない。
能登半島地震では、行政が把握していなかった大規模盛り土造成地が崩れ、住宅被害も出た。専門家によると、高度成長期に届け出が不要だった盛り土は、全国に存在するという。
山を切り開いて造成した住宅地は数多い。どのような災害の恐れがあるのか、住民が把握できるための情報が重要になる。
国や自治体は、公開している造成地の場所をホームページで確認するよう呼びかけている。過去の事例も交え、危険度が実感できる伝え方の工夫が求められる。
大雨シーズンに入り、線状降水帯の発生などで土砂災害が起きている。住民自ら積極的に地域のリスクや避難の手順を点検しておきたい。
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