社説:日本版DBS法 子を性犯罪から守る一歩に
京都新聞 / 2024年7月6日 16時0分
子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を、雇用主側が確認する「日本版DBS」創設法(こども性暴力防止法)が先の国会で成立した。
学校や幼稚園、保育所などに確認を義務付け、性犯罪歴のある人は刑の終了から最長20年は就業を制限される。2026年度にも始まる。
性犯罪から子どもを守る着実な取り組みを進めたい。
国会では、創設法に19もの付帯決議が採択された。制度の実効性向上への検討を求める項目が多い。特に、対象となる性犯罪歴や職種、照会期間の拡大を求める声は根強い。
雇用主が確認できる性犯罪歴は刑法犯のほか、痴漢、盗撮など条例違反に限られた。
下着窃盗やストーカー規制法違反も含むよう市民団体による署名活動が起こったが、「性暴力とは言えない」と判断された。示談に伴う不起訴事案も対象ではない。
義務化された学校などに対し、民間の学習塾や放課後児童クラブ、認可外保育所、スポーツクラブなどは任意の認定制度となった。
講師による盗撮事件があった大手学習塾をはじめ、制度に参加するかどうかは運営側の判断に委ねられる。家庭教師やベビーシッターら個人事業主は対象外である。
こうした適用範囲となったのは、憲法が保障する職業選択の自由などとの兼ね合いを考慮したためだ。
創設法は施行後、3年をめどに見直すとしている。犯罪抑止効果の検証と課題の洗い出しが求められよう。
検挙された子どもへの性加害の9割は初犯とされ、確認制度で防ぎきれないことは、改めて踏まえる必要がある。
創設法では、性犯罪歴がない場合でも、雇用主側が子どもや親の相談を受け、「性加害の恐れがある」と判断すれば、現在働いている人も対象に、配置転換など安全確保措置を取るとした。最終手段として解雇も許容される。
ただ、どういった場合が「恐れがある」に該当するのか、判断基準は示されていない。
就業制限は極めて慎重であるべきで、雇用主側による恣意(しい)的な運用は避けなくてはならない。事業者は犯歴を扱うだけに、厳重な情報の管理体制も問われる。
ガイドラインを策定するこども家庭庁は、現場が混乱しないよう速やかに明示すべきだ。
法整備と同時に、性犯罪を未然に防ぐ環境づくりに向け、「死角を作らない」「子どもと2人きりにしない」といった対応も進めたい。
危険を自覚するための子どもへの性教育に取り組む一方、加害者に対しても治療、社会復帰に向けた就労支援の充実が不可欠だろう。
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