「新しい一歩を踏み出してもいいんじゃないか」 週末農業に出合い退職決意、滋賀で科学と農業の「先生」に
京都新聞 / 2024年7月11日 12時35分
ある時は、子ども向け科学教室の先生、ある時は農業の魅力発信クリエイター。他にも、発酵教室の講師や農業を通じたひきこもり支援のメンバーとして、農と発酵と科学を広める活動に取り組んでいる今井由莉さん(35)。
「癒やしにもなる農業は心を、健康に役立つ発酵で身体を、論理的思考力が身につく科学で頭脳を、それぞれ整えられる。自分が得意な三つの分野で、子どもたちをはじめいろんな世代の人に貢献できたら」とほほ笑む。
名古屋市出身で、名古屋大大学院で生分解性プラスチックなどについて学んだ後、京都の化学メーカーに研究職として就職。自動車用塗料やウレタン素材の研究開発に携わった。結婚後、不妊治療に取り組んでいたところ、新型コロナウイルスが流行。人との接触ができなくなり、仕事と治療の両立のつらさを一人で抱え込んでいた時、週末農業に出合った。土に触れ、野菜の成長に心が癒やされ、救われた。「これをきっかけに人生の新しい一歩を踏み出してもいいんじゃないか」。退職を決意した。
滋賀県守山市内に引っ越し、夫と一緒に農業の魅力発信を行うサイト「Everybody農s!」を立ち上げた。子どもたちが親しめるよう野菜のキャラクターを作り、カードゲームやLINEスタンプを作成した。
一方、妊娠したことで健康についても勉強するようになり、腸を整える発酵食に着目。みそや塩こうじ、キャベツを使ったヨーロッパの漬物「ザワークラウト」など自ら作るようになったことがきっかけで、発酵教室も開いている。
4月からは、市社会福祉協議会と連携してひきこもりの人たちの農業体験を支援する活動に参加。一緒に野菜づくりに取り組んでいるほか、大手教育会社が展開する科学教室の講師として、子どもたちに実験の楽しさを伝えている。
「自分の子どものためにと思って始めたけれど、それだけではもったいない。もっと多くの人に自分の知識や経験を還元したい」と話す。
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