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社説:教団「念書」無効 被害救済につなげたい

京都新聞 / 2024年7月17日 16時5分

 教団による高額献金の被害に苦しみながらも返還請求を諦めていた人たちにとって、希望をつなぐ判決といえよう。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に1億円以上を献金した元信者の女性(故人)の長女が損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が、「返金や賠償を一切求めない」として女性が教団に提出した念書は無効との判断を示した。

 判決では、合意の経緯や寄付者の健康状態、不利益の程度などを考えて念書の有効性を決めるべきと指摘した。女性は作成時に86歳と高齢で、教団の心理的な影響下にあったとして、「合理的な判断が難しい状態を利用し、公序良俗に反している」と断じた。

 女性が念書に署名した際、信者らが文案を作り、意思を確認するビデオを撮影した点を踏まえて「教団側の主導」とし、損害の回復手段を封じたと非難した。教団は「自由意志」と主張するが、訴訟を見越し、高齢者をだます手口の悪質さは明らかということだろう。説得力のある判決だ。

 教団の献金問題で最高裁が判断を示したのは初めてである。これまでは書面の存在を理由に返還請求訴訟が門前払いとなった事例もあっただけに、救済の可能性が広がる意義は大きい。

 今回の判決では、献金勧誘が違法かどうかも焦点となった。

 最高裁は、寄付者の生活維持が困難にならないかなどの事情を考慮し、社会通念上相当な範囲を逸脱した場合は違法とする判断基準を示した。その上で、土地を売ってまで献金した女性のケースを「異例」として違法性を示唆した。

 今後、差し戻し審で勧誘行為が違法と判断されれば、教団に責任が及ぶ可能性が出てくる。国が請求している教団の解散命令の訴訟にも影響するだろう。

 2年前に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件以降、教団による深刻な献金被害が次々と明るみに出た。信者の子である「宗教2世」の苦悩も浮き彫りになった。

 今回の判決前、教団の田中富広会長は共同通信のインタビューに応じたが、「民主主義の根幹である思想信条、信教の自由の危機」などと言い逃れに終始し、いまだに謝罪の言葉を語ろうとしない。

 一連の問題を経て、政府は不当寄付勧誘防止法などを制定した。だが、共同通信の2世アンケートでは、「救済策は十分」との考えを示したのは8%にとどまる。不断の検証と見直しで、法の実効性を高めねばならない。

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