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社説:島サミット 寄り添う協力関係こそ

京都新聞 / 2024年7月25日 16時0分

 日本が太平洋の18の島しょ国・地域を招いて開いた国際会議「第10回太平洋・島サミット」は、気候変動問題や安全保障などの協力を盛り込んだ首脳宣言と共同行動計画を採択した。

 海上交通の要所に広がる南太平洋の島々では近年、中国が巨額援助で分け入り、米国と影響力を競う「最前線」となっている。

 こうした覇権争いに利用するのではなく、日本は同じ島国として地域課題の解決に寄り添っていく姿勢で連携を深めたい。

 首脳宣言で前面に掲げたのは、島しょ国の「存続に関わる唯一最大の脅威」と位置付けた気候変動問題である。日本の衛星データを利用した防災体制の強化や、脱炭素化への支援策など、今後3年間の行動計画を打ち出した。

 島しょ国側が策定した「2050年戦略」の気候変動と災害、資源と経済開発など七つの柱を踏襲し、日本の協力を具体化した。

 いち早く日本が呼びかけ、1997年から3年ごとに島サミットを重ねてきた友好関係を土台に、共に歩む姿勢を示したといえる。

 懸念の声もあった東京電力福島第1原発処理水の海洋放出問題は「科学的根拠に基づく重要性」で一致し、透明性ある説明を続けるとして一定の理解を得た形だ。

 これら島しょ国を重視する日本の姿勢は、インフラ整備をてこに急速に浸透している中国を意識しているのは間違いないだろう。

 台湾と断交して中国と国交を樹立する島しょ国が相次いだ。2022年にはソロモン諸島が安全保障協定を締結。中国の軍事拠点化への懸念が周辺で広がった。

 危機感を強めた米国も島しょ国と首脳会合を開いて巻き返しを図り、綱引きの状態にある。

 今回の首脳宣言は「武力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対」を明記し、海洋進出を強める中国をけん制した。自衛隊機や艦船の寄港を通じた防衛協力、海上保安庁の交流強化も掲げた。

 一方、前回の宣言にはあった日本の看板政策「自由で開かれたインド太平洋」の文言が消えた。ソロモンとバヌアツの首脳は、訪日直前に中国で習近平国家主席と会談した。バランス外交によって双方と一線を画したいのだろう。

 歴史を顧みると、日本は南太平洋で第1次世界大戦後にパラオなどを委任統治し、移民も多く渡ったが、日米開戦で激しい戦火をもたらした。国際対立に巻き込み、分断を広げるのでなく、地域全体の安定と互恵関係を築きたい。

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