社説:最賃の引き上げ 京滋でも後押し議論を
京都新聞 / 2024年7月26日 16時5分
2024年度の最低賃金(最賃)について、全国平均で時給1054円とする目安額を、厚生労働省の中央最低賃金審議会が取りまとめた。引き上げ幅は昨年度(43円)を上回る50円と過去最大に、時給額も最高となった。
歴史的な物価高と、春闘で大幅な賃上げが相次いだことを受けた引き上げ幅拡大といえよう。
働く人すべてに適用される最賃は昨年度、平均千円の大台に乗ったが、労働者の生活は好転していない。物価変動を考慮した実質賃金は、前年比マイナスが2年以上も続いている。
審議会では労働者側の委員から「生活していけない」などと切実な声も上がった。働く現場の実態に即した賃金の底上げ実現へ、政策を総動員すべきである。
今回の目安額通り改定されれば、全都道府県で時給900円以上になる見通しだ。京都府は1058円、滋賀県も千円を超え1017円となる。
目安額は経済状況に応じて都道府県をA~Cの3区分に分けて示されるが、今回は上げ幅に差をつけず3年ぶりに横並びとした。
ただ、それでは最高の東京都と最低の岩手県の差は220円のまま縮まらない。
岸田文雄首相は「30年代半ばまでに1500円」とする目標を掲げる。6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」では達成の前倒しを目指すというが、たとえ実現しても先進国の水準と比べると見劣りがする。
一方、大幅な最賃の引き上げは中小零細企業の負担が重い。
連合の最終集計によると春闘の平均賃上げ率は5.1%だったが、中小零細企業を対象とする政府の集計では2.3%にとどまっている。
人手不足が深刻化し、原材料高や労務コスト増の価格転嫁が思うように進んでいない背景がある。大手の下請けに対する価格抑制を見直し、IT導入や省力化などで企業の生産性を高める支援に国は一段と工夫を凝らしてほしい。
今後の焦点となるのは、8月から本格化する都道府県単位の地方審議会での議論だ。
昨年度は佐賀県で中央最低賃金審議会が示した目安額から全国最大の8円増やすなど、上乗せが24県に及んだ。
より高額の都市部などへの人材流出を防ぎ、担い手を育む上でも、京都や滋賀も含めた各地域で上積みや後押しの議論を深めてもらいたい。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
最低賃金、1054円 上げ幅50円は過去最大
共同通信 / 2024年7月24日 23時27分
-
最低賃金、過去最大50円増=物価高で時給1054円―新たに8道県が大台乗せ
時事通信 / 2024年7月24日 22時51分
-
最低賃金を過去最大50円引き上げ、全国平均は1054円へ…中央最低賃金審議会の小委員会
読売新聞 / 2024年7月24日 22時24分
-
最低賃金協議、今日中にも決着へ…50円程度引き上げ方向で最終調整
読売新聞 / 2024年7月24日 12時0分
-
最低賃金協議は24日に持ち越し…1050円台半ば、過去最大の上げ幅「50円程度」で調整
読売新聞 / 2024年7月23日 22時45分
ランキング
-
1《福岡・12歳女児を路上で襲い不同意性交》「一生キズが残るようにした」八並孝徳被告は「コミュニケーションが上手くないタイプ」「小さい子にもオドオド……」 ボランティアで“地域見守り活動”も
NEWSポストセブン / 2024年7月26日 7時20分
-
2回転寿司チェーンで“ひとり負け”状態のかっぱ寿司。大手3社と分かれた明暗
日刊SPA! / 2024年7月26日 8時52分
-
3新型コロナ第11波が本格化 経済負担や熱中症が追い打ち、救急・医療も逼迫
産経ニュース / 2024年7月26日 7時0分
-
4記録的な大雨、山形県が陸自に災害派遣要請…秋田県では土砂崩れで1人不明
読売新聞 / 2024年7月26日 0時4分
-
5大雨で警察官ら3人不明 「パトカー流された」110番 山形・新庄
毎日新聞 / 2024年7月26日 7時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください