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社説:パリ五輪開幕 問われる「平和の祭典」の意義

京都新聞 / 2024年7月27日 16時0分

 パリ五輪の開幕である。近代五輪の父、クーベルタンの生誕の地で100年ぶりに開かれ、男女の出場選手が初めて同数になるのも歴史的に意義深い。

 大会には200を超える国・地域から約1万人の選手が参加する。新型コロナウイルス禍で無観客となった3年前の東京大会から一変し、競技場を埋める観客の歓声が戻ってくる。

 日本からの出場は400人を超え、海外での大会では最多となる。京都、滋賀ゆかりでは、初採用競技のブレイキンで登場する41歳の福島あゆみ選手ら計34人が挑む。鍛錬を重ねてきた力を存分に発揮してほしい。

 開会式は、スローガンの「広く開かれた大会」を反映し、夏季五輪では初めて競技場外となるセーヌ川が舞台となった。

 「新時代の五輪」を掲げ、競技会場の95%は既存施設か仮設を用いてコスト抑制に努めたという。肥大化に歯止めをかけ、五輪の持続可能性を重視する上で今後のモデルになりそうだ。

 一方、世界情勢に目を向ければ、暗たんたる気分を振り払えない。欧州と中東で理不尽な戦火が続く現実が、祝祭の開幕に重くのしかかる。

 ロシアの侵攻を受けるウクライナでは、選手やコーチなど470人以上が死亡し、イスラエルの攻撃が続くパレスチナ自治区ガザでも約400人のスポーツ関係者が命を落としている。

 国連総会は昨年11月、大会中の紛争停止を求める「五輪休戦」を決議した。だが、ロシアは棄権し、賛成したイスラエルは休戦期間に入った今月22日以降もガザ南部の「人道地区」を攻撃し、形骸化は甚だしい。

 犠牲者が増え続ける中、五輪の理念である「平和の祭典」の意義を見つめ直したい。

 紛争当事国の扱いを巡る国際オリンピック委員会(IOC)の対応にも疑問を禁じ得ない。ロシアとベラルーシの選手らを締め出す一方、侵略を支持しないなどの条件で「中立選手」として参加を認めた。だが、イスラエルへの制裁はなく、「二重基準だ」との批判が渦巻く。

 メダル至上主義や過度な商業化は是正されず、東京に続き、パリでも組織委員会の不正が表面化した。招致を巡る不透明さを改善できないIOCの体質は厳しく問われよう。

 選手のコンディションよりも放映権料やスポンサーの都合を優先して日程や競技時間を決める姿勢も、かねて批判される。こうした問題を放置すれば、五輪の存在意義も疑われる。

 それでも、アスリートたちは最高峰の舞台でベストを尽くすだろう。

 自国選手の勝敗に一喜一憂するだけではもったいない。五輪は、スポーツを通して世界の多様性を知る絶好の機会だ。国や人種などの違いを越え、互いを認め合う。そんな希望が感じられる大会になってほしい。

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