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社説:原発建設費 理解得られぬ電気代上乗せ

京都新聞 / 2024年7月28日 16時0分

 電力会社に重荷となったから国民の懐をあてにしよう、とでもいうのだろうか。

 原発の新増設の建設費を電気料金に上乗せできる仕組みを、政府が検討している。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえた安全対策などで巨額となる投資の回収を容易にし、原発建設を支援する狙いとみられる。

 浮上している案では、国が認可した原発の建設が始まった時点で建設費や維持費などを電力の子会社が負担し、電気料金に上乗せして回収する。

 建設費が当初計画より増えた場合でも、必要経費と認められれば電気料金に転嫁できるという。

 電力自由化で再生可能エネルギーによる電気を供給する小売会社を選んだ人も、原発建設のコストを負担させられる可能性がある。

 福島の事故の収束や核のごみ処理の見通し、国民的理解もないまま、政府は脱炭素を理由に「原発の最大限の活用」へ政策転換した。「原発回帰」策の負担を全ての消費者に押しつけるものではないか。

 政府は30年度の電源構成で原子力比率を現在の5.5%から20~30%に引き上げるとし、原発の新増設や60年超運転も打ち出した。

 一方で、原発の安全対策費用は膨らみ続け、再稼働のために建設費を上回る費用を投じた原発もある。

 新設や増設にはさらに膨大な費用が見込まれ、電力大手は支援策を求めている。

 裏を返せば、原発のコスト面の優位性は失われ、経済合理性がないことを示していよう。

 政権や電力会社は原発利用で電気代を下げられる、とアピールするが、現料金には再エネ普及のための賦課金に加え、原発事故賠償金や廃炉費用も含まれている。さらに建設費を上乗せすることに、国民の理解は得られまい。

 電力業界のシンクタンクは、生成AI(人工知能)用のデータセンター新設などで電力需要が大幅に増えると予想するが、妥当な予測だろうか。

 米アマゾン・コムが2025年までに日本国内事業向け物流施設やデータセンターの全電力を再エネで賄う方針を打ち出すなど、AI関連の先端企業は再エネの調達を急いでいる。

 原発ではなく再エネの拡大に資金が回る政策こそ、急ぐべきではないか。

 原子力規制委員会は日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県敦賀市)について、原子炉の直下に活断層があると判断し、原発の新規制基準に適合していないとして、再稼働を認めない決定をした。同原子炉は廃炉を迫られる見通しとなった。

 原発には、安全性にも持続可能性にも多くの疑問符が付いている。資金を注ぎ続ける新制度を作ることは認めがたい。

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